崔信化(チェ シンファ)さん
 昨年度、内定先の吉本興業に就職し、現在主に「BONITA」の
プロデュースなど韓国関連事業で活躍中。


 一人の常連客は、こう話を持ちかけた。「卒業したらうちの会社で働いてみないか。韓国と日本は親しくならなければいけないし、必ず親しくなるという」。当時、崔信化(チェ シンファ)さんは法政大学法学部二年生だった。昨年度、内定先の吉本興業に就職し、現在主に「BONITA」のプロデュースなど韓国関連事業で活躍中。

 ■一期一会  
  大学時代、六本木のサウナ屋でアルバイトをしていた。そこはマスコミ関係の業界人が行きつけの店で、時には某大手会社の重役なども訪れる店だった。仕事柄多くお客さんと雑談をする。ちょっとした仕事の合間での会話が、次第にお互いを惹きつける事になった。  「その方は吉本興業の中でも、偉い方で韓国に対して非常に関心を持っています」。人と自然に接し、自分の持っている気持ちを真っ直ぐに伝える。そんな「当たり前」のコミュニケーション能力が担当者の目に止まり、心を動かしたのだろう。  ちょっとした出会いが、人生を大きく変えるような、そんなドラマのような出会いだった。まさに一期一会だ。  「僕は吉本に決めました。その方は、本当に僕を信じてくれるし、こんなにも可愛がってくれる人はいないと思って。なにも考えずに吉本興業のその方の下で、一緒に働こうと決めました」 ■AVEXを蹴って吉本興業へ決める
 吉本だけではなく、同業種に近いAVEXからも話があった。吉本興業に決めた理由は二つある。一つは「文化」を結びつける仕事だ。  「僕が吉本興業に決めた理由の一つは、自分が韓国と日本の掛け橋になりたかったことです」

■掛け橋
 日本と韓国との掛け橋。留学生がありきたりに使う言葉かもしれない。しかし、この言葉を実践するのは難しい。韓国留学生の日本企業への就職口は少なく、十人中八人はそのまま国に帰るし、就職できてもほとんどが韓国系の小さい会社(観光会社など)に就職する。  厳しい現状を知りつつ自分にとっての仕事を「夢を達成するための機会の場だと思っています」と胸を張って主張する。思いは実に強い。  「もし就職できないなら、自分で日本と韓国に関しての会社を起こそうと考えていました」

■人
 もう一つは「人」だ。人を結びつける仕事、そして吉本興業の人に惹かれたからだ。「いくら給料を多くもらっても、人が嫌だったら長くは続かないと思うし。例え、長く続いてもやりたい仕事が本気でできるとも思えないので。なにより人間関係、信頼関係というのが一番大切だと思っています」。担当者だけではなく、吉本興業という会社の「人」に魅せられた。

■吉本興業という会社
 「よく吉本はタレントや人の扱いがひどいと言われていますが、僕が見ている限りはすごく大切にしています」。吉本興業には、文化交流をビジネスチャンスとしてクリエイトする仕事がある。 「特別扱いをしないで、普通に接してくれる上司に感謝しています」。吉本興業は、他の会社より先に韓日関係の先頭に立つ事業を構築する事に期待している。入社して間もない現在は、テレビ朝日で毎週火曜日夜9時から放送されている「人気者でいこう!」で出演している「BONITA」というグループを担当する。また一方で、韓国の映画やドラマなどの輸入の仕事も手がける。  「韓国の仕事が僕に全部くるのがちょっと怖いです」。

■市場の潜在力
 「韓国の若者は日本の文化を望んでいる」。韓国での日本文化は一部の若者層を除いては開放されてはいない。一方で、最近の韓国映画や歌手で沸く日本での韓国のブーム。象徴的に二国間の文化交流を表している。そのため、この仕事は二国間の歴史には深い洞察力を必要とする。  仕事上での難しさを「僕にとって大きい壁と言うであればやっぱり言葉ではないでしょうか。仕事する上で、言葉が通じなく無視される時もある」と語る。  しかし、日本文化への理解は人一倍深い。「韓国と日本は一番近くて遠い国だといわれています。それが非常に残念だと思います。その距離を埋めるのが、僕のこれからの仕事ではないでしょうか」。

■思っていたよりかなり面白いと思いますよ
 正直に、外国で働くことが面白い。「外国で自分一人でやっていくのって、かなり達成感があります。ひとつ、ひとつ、やり解けて自分は満足しています」。  また、この仕事は様々な人と巡り会える。「テレビと同じ様に面白い人です。芸能人と言う印象より、普通の面白いおじさんだという感じでした」。ダウンタウンの番組で出演の仕事に携わった。「この仕事で一番嬉しくて、面白かった時ですね」

■日本のお母さん
 「大学の生活で一番得たものは、日本の友達と先生との出会いです。ゼミの荒谷教授には、感謝しています」。同級生の林輝男君とは、本当に親しくなり、彼の家に遊びに行ったり、おばさんに「お母さん」と呼んだりもした。

■夢
 「なんていうか、日本では問題なく生活できるし、普通に働ける日本が好きです」。彼の夢は二つある。「小さい頃に好きだった彼女の夢」だった孤児院の院長になる事。もう一つは自分の会社を持つ事。将来は吉本興業のような規模の会社を自分で設立してみたいという。「でも、これから吉本興業で働き続ける事は、問題ないです(笑)」。

 



 

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