「 その頃は明治公園で革マルと中核が反目していて、試験になると必ずロックアウトになったね。授業料値上げ問題とか言って」  法政大学に入学したのは一九七一年。六角校舎が壊され、ちょうど学生会館ができて間もない頃だった。
 「自慢じゃないけど、ほんと大学の授業は出たことなかった。僕の場合は時代が助けてくれたようなもんだからね。サークルは自分ででっち上げて、文学思想研究会というのを作りました。部室を持ちたくて」 最初の一年間は四月から九月まで、それ以降は履修登録時と試験期間以外、広島で生活をする。「レポートの提出とかは、れもん屋という広島お好み焼き屋の前にある雀荘で情報交換してました」。もちろん出席重視の体育はぎりぎり。革靴で授業を受け、何とか単位をもらえた。語学もフランス語は追試で、英語は他人に言えない方法でカバーする。
 東京にいる間は、文京区本駒込にある「アジア文化会館」で住み込みのアルバイトをしていた。「アジアの留学生を日本に迎える自主運営の施設で、夜間受付をしてました。場所柄、東京外語大学の学生が多く、たとえばパキスタンとかイラン、イラク、台湾やセイロン(スリランカ)の学生もいましたね」
 法大卒業後は地元のテレビ新広島に入社。開局前の一期生として採用される。「番組を作りたかったのでマスコミを志望しました」。しばらく編成部に所属するが、開局当初は部局の枠を越え、科学番組からドキュメンタリーまでいろいろ手がけた。ローカル局ならではだったという。
 業務推進部に移ってからはアシアナ映画祭を企画。「九四年の広島アジア大会の二年くらい前だったかな、広島空港が国際空港になって、アシアナエアラインでアジアとつながったんですよ。それでアジアを知ってもらうには、映画がいちばんと。テレビ新広島が持ってる文化ホールでやったんです。アジア文化会館にいたことも非常に大きかったですね」。映画はその国の風土を映す。韓国映画『風の丘を越えて』にはじまり、早くも翌年には香港映画のニューウェイブ、ウォンカーウァイ監督に着目。『欲望の翼』を上映し好評を博した。
 現在は再び編成部に戻り、月に一度はフジテレビと広島を往復している。「広島は全国基幹七地区の一つなんで、編成情報の交換のためにフジに集まるんですよ。例えば、吉本の笑いは大阪では受けるが、東京では受けないとかね」
 番組とはみんなで作るもの。自分一人でやっているんだという意識はバランスを崩す。チームプレイの中で主体をいかに発揮できるか。我が強すぎても、全然なくてもいけない。いわば「集団芸術」。集団を個々が支えている形だ。たとえ営業でもスポンサーを取ることで番組が作れる。そういう意識を持ってやるべきだ、と語気を強める。
 「人間関係をもっとうまく作れないとね。今の学生はぽつんぽつんとして、確かに集団になるけど形にはならないですね。人間が多いほど面白いものができるのに」
 授業を受けて帰るだけの自宅生が増え、コミュニケーションが非常に悪くなった。地方出身者の割合が多かった昔は、人間関係の輪も広かった。大学で勉強したことそのものが役に立つわけではない。むしろ社会に出るためのステップだ。 「だから全寮制にすればいいんですよ。集団で飯を食って。村上春樹の小説に出てくる寮は学校を利用した奴で、ロープにシーツ垂らして仕切りにしてる。できるだけそういう合宿みたいのはした方がいいね」。昔と今では人間関係の揉まれ方が違う。会社は共同作業の場。揉まれずに社会に出ても使いものにならない。
 最近は修学旅行に行きたくないという学生も少なくないと聞く。「昔は旅行に行けないという状況があって、積み立ててみんなで行ったんだけど、今は親に連れってもらえるからね。修学旅行は集団生活。枕投げしたり、あそこが大きいとか小さいとか話してね。いい思い出になるのだけれども、それがぽんとなくなるのは寂しいよね」 番組を作るには最低でも二十人から三十人くらいは必要。番組制作は共同プレイだ。美術、音声、脚本、照明、カメラ、衣装係。スタッフはそれぞれの役割を見極め、自分から個々に行動しなければならない。
 「それを言わなきゃできないんじゃ、成り立っていかないよ。例えばね、中華料理食べたいという時に、用意できるものっていっぱいある。ラーメンでありコップであり、餃子とかね。僕がいちばん偉い監督で中華食べたいと言ったら、小道具さんは箸を用意して、和食だったら畳を用意したりね。みんな監督の意図を察して行動する。これを大学時代に身につける。ぜひ共同生活してほしいですね」

 

 


島村誠(しまむら・まこと) 1975年法政大学社会学部卒業。テレビ新広島に一期生として採用される。東京勤務、業務推進部を経て、現在は編成部部長として活躍。  

 



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