大崎雄三   

法政大学第一教養部助教授 中国語・現代中国地域研究       


 「そうですね、牧師さんやお坊さんの話をお行儀良く聞くような授業じゃなくて、ニューヨーク・ハーレムの教会みたいにみんなで歌ったり踊ったりしちゃう感じかな」  
大崎さんのモットーは「学生主体の楽しい授業」
「初めて法大に非常勤講師としてきたときは大変なショックでした。つまんなそうな顔するわ、居眠りするわで、本当にあがってしまったんです。何千万人の視聴者に向かってカメラの前でペラペラしゃべっていた人間がですよ」  
かつてはNHKの記者としてブラウン管の中で働いていた。
「権力を持たない人の声を大切にしてきました」
 学生時代に留学していた中国の真実を伝えようと報道の仕事につく。北京特派員時代も積極的に街へ出て庶民の本音を集めたり、要人に体当たりで「突撃インタビュー」もした。  「『残留孤児』の取材じゃカメラを回しながら自分もワンワン泣いていました。やっぱり涙のないニュースって言うのは相手に伝わらないんじゃないかな」
 記者に必要なのは、権力が隠したい情報を特ダネとして明らかにしたり、そのままでは消えていく名もなき人々の歴史を記録として残すことなのだと話す。
 「それこそが皆で共有すべき歴史の教訓や社会の知恵でしょう」  「みんな誤解してるんだけど、マスコミの仕事ってほんとはカッコよくないし、むしろカッコ悪いんだよね」と今までの経験を交えて語る。
 「アヒルの水掻きと一緒で、涼しい顔して泳いでいるようでいて、下では一所懸命取材しているんですよ」  
 取材先では起こられたり追い返されたり、決してきれいごとだけはすまなかった。しかし、人の痛みや悲しみは同じように共有してきた。 生きてる人間が相手  
 特派員として最後の仕事は八十九年の『天安門事件』。銃弾が飛び交う中、夜中取材を続けた。 事件後の無力感が転職の一つのきっかけだという。しかし記者の経験は教員になってからも生きていると話す。
「私、教室の構造自体嫌いなんですね、あれはヨーロッパの近代が生んだ監獄と同じ発想の構造なんです。教員の側からは『一望監視装置』で見えるけれど、学生はお互いの顔が見えない仕組みなんです」  
 屋外で車座になって授業をしたり、個人やグループで考えをまとめ、様々な「パフォーマンス」もできるよう工夫している。「法政ほど面白い授業ができるところは無い。まるで「親バカ」で、あちこちで『法政の学生は日本一』と公言しています」  他の大学でも教えたことはあるが、法政が一番相性がいいという。 「法政の学生の良いところは、まずひとなつっこいところ。そしてきちんと自分の生活スタイルを持っている学生が多いことです」 「挨拶や話がきちんとできる学生って言うのは、今、少ないんですよ。もし、私が企業の採用担当者だったら、法政の学生をたくさん採用したくなりますね」  
 最後に記者から助教授なった今、改めて二つの顔を比べる。 「やっぱり記者も教員も生きている人間と対峙してぶつかり合う、そこから何かを汲み取っていく。その点では同じですね。大好きな詩人・金子みすずさんの言葉を借りれば、『みんな違って、みんないい』。自分と違うものこそを尊重して学びあう。そういう気持ち、大切にしたいですよね」
 


  

 


 

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