人気演劇サークル「T劇」

その舞台裏と練習風景に迫る   


 演技、舞台の制作はもちろん、脚本までほとんど自分たちの手で作り上げる演劇サークル「一部演劇研究会」、通称一劇。年に四回ほど行われる公演で、人気を博している。その演劇はどのように練習されて、どう形成されていくのか。七月二日から六日にかけて行われる公演「Double〜ダブル〜」の稽古を取材した。

  稽古が行われているホール棟のアトリエ十一番を訪ねた時、ちょうど休憩時間だった。休憩中は、サークル員はうつぶせになり、仮眠をとっていたようだ。仮眠というわりには、眠りが深すぎる気がする。やはり稽古ではかなりの体力を消耗するらしい。舞台のほうは、まだ建設途中らしく、休憩時間でも金づちを振るう音が鳴り響いていた。

 稽古が再開された。仮眠をとっていたサークル員たちもすぐ起き上がり、自分の持ち場へと戻っていった。そして本番さながらの形式で、稽古が始まった。演出家の「始めるよ、さんはい」の一言で、アトリエ十一番の世界が一変した。舞台が未完成で、その場にいるほとんどがTシャツにジャージであることを除けば、まさに普段目にしている公演の世界だった。役者たちも、数分前にあれだけぐったりと眠っていたとは微塵も感じさせないほど、完全になりきっていた。

 続けていくうちに、ところどころに演出家の指導が入った。舞台照明の演出の仕方が微妙に違うらしい。演出家が指導を始めた。稽古が中断している間、役者たちは雑談に花を咲かせていた。公演が近く、余裕がほとんどないかと思っていたが、雰囲気はあくまでも明るかった。全員が追い詰められて稽古をしているのではなく、自ら進んで楽しみながら稽古に臨んでいるのが伝わってきた。

 何度か稽古が繰り返された。最初に比べ、修正された個所がいくつもでてきた。それでも試行錯誤が尽きることはなかった。役者たちも「ここの笑い方は、にやっていうよりもにかって感じのほうがいい」、「この台詞の後になにかアドリブをいれて」と意見を出し合う。サークル全体で作品の質を少しでも向上させようとする姿勢が、印象的だった。

 一つの舞台を大人数で作り上げ、それを観客に披露し、楽しませる。それは相当な時間と自分を犠牲にしなくてはできない作業だ。事実、取材した日に行われていた稽古は、午前十時半に開始され、ホール棟が閉館する午後六時まで行われていた。肉体的にはもちろん、精神的に相当疲弊するのは間違いない。それでも、サークル員全員が疲労の色を見せずに稽古に打ち込んでいた。「常に上を目指し、演劇の可能性を追求するのが一劇の活動方針です」と今回制作を担当した飯塚さんは言う。全力で創られ全力で演じられる一劇の演劇。飯塚さんの言葉のとおり、追求する貪欲さと演劇に対する多大な熱意を垣間見た気がした。      

 (梅沢牧人)

 



 

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