東京雑貨マガジン「goodies」(以下「goodies」)は、昨年十二月に現役法大生、室伏論平さん(営・四)、米村和彦さん(営・四)によって創刊された。この雑誌は、男性の視点から女性が「かわいい」と思うような雑貨を紹介している。六月に第二号を発行した彼らに、雑誌製作や大学生活などについてインタビューした。

 「基本的に(取材、営業、編集など)全部二人でやっているから、びっしり時間が詰まっているのが辛い。資金も稼がなければならないし」。割のいい宅急便のアルバイトで、まずお金を稼ぐ。ゼロからのスタートである。

 ポップでカラフルなこの雑誌は、中野にある六畳一間のアパートで産声をあげる。「部屋にかわいい雑貨は何もないよ。唯一あるのは、撮影で壊れて、買い取った灰皿だけ。四千円もした」。作成する二ヶ月間は、このアパートに泊り込み、男二人の同棲状態である。「しめきり間際は、お互い物をバンバン置いちゃって、部屋は散らかるし、物は見つからないし。イライラして嫌な空気が流れたり」  そんな辛い作業もあるが、二人にとって「goodies」は、子ども同然。「自由が丘で、(「goodies」に掲載している)地図を頼りにお店を探している人がいたというのを聞いて、嬉しかった」と我が子の活躍ぶりを、満面の笑みで語る。  きっかけは、米村さんが「憧れていたテレビ局への就職に失敗して、他に就職するかどうか迷っていたときに、論平に誘われた」ことだ。どこまで二人だけでやれるのか、自分たちの可能性を試したかったと言う。しかしお金もなく、時間もない。現実は厳しい。「若いからできるっていうのはあるけど…。俺ら、もう若くないけどね。今年で二十五歳」。確かに、編集後記の彼らのプロフィールには、「二浪一留済み」と書いてある。「来年も『法大生が作った雑誌』って紹介してあったりしてね」と米村さんは笑って言うが、室伏さんは「卒業しないとまずいんだよ」と声のトーンを落とす。

 二人はインタビュー中も、「goodies」のことが頭から離れない。「こういう企画があるんだけど、どう?」「最近の女の子は何に興味があるの?」と逆に質問してくる。「今いくつ? 二十歳? 若いなぁ。やりたいことがあるなら、遊びでも何でも、若いうちにやった方がいいよ。自分も言われていたけど、ダラダラ過ごしちゃって。でも後になって、やりたいことがたくさんでてくるんだよね」。ダラダラとした生活、迷いや挫折を経験してきた彼らの言葉には、重みがある。「やりたいこと、何かある? 普段は何してるの?」と二人に聞かれ、私は言葉に詰まった。私にはやりたいことがあるのに、普段何をしているのか、はっきり答えられない。

 「お金がない」「時間がない」と嘆いてばかりで躊躇しているうちは、いつになっても、やりたいことなど何一つできない。お金も時間もない、ゼロの状態から始めた彼らは、現実を真面目に受け止めているにもかかわらず、「アホなだけですよ」と明るく言う。しかし、賢く生きていくよりも、「アホ」になりきる方が、はるかに勇気がいる。そこで一歩踏み込むことのできる彼らを、私は羨ましく思う。

 「卒業後もこれ一本で、可能な限り続けていくつもり。雑貨・インテリアと言えば、『goodies』と言われるような雑誌にしていきたい」と勢いのある声で、はっきりと語った。また、東京だけではなく、関西へも取材に行く計画があると言う。「東京雑貨マガジン」から、「ヴィジュアル雑貨マガジン」へと成長するために。

 次号の目標は、ショップ百件、雑貨千点以上。この夏休みも、忙しい日々が彼らを待っている。    (取材・文 尾島千晴)

 

  


 

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