危機管理体制を大学に聞く 後編

大学構内の危機管理について


 四月号で、大学の危機管理体制について学内ネットワークの管理をしている情報センターと、学内食堂運営業者のシダックス、生協にきいた。今回はその後編として、大学構内の危機管理体制を問うために、本学総務部に取材し、文書で回答を得た。

火災発生!その時大学は

 昨年九月に発生した新宿歌舞伎町の雑居ビル火災では、四十四人の死者が出る惨事となった。このビルでは、日常から避難経路となる階段が荷物でふさがれ、火災発生時は防火扉が作動しなかった。結果、多くの死者が出たとみられる。

 本学では火災が発生した場合に備えて、市ヶ谷、多摩、小金井の各キャンパスとも、「自衛消防隊」を職員で組織し、それぞれ消火班や誘導班などの任務を分担している。またキャンパスごとに防火管理者を置き、消防計画を作成している。ほかに、構内に設置の消火器やスプリンクラー設備は年二回点検しているという。

 しかしこれらはすべて、消防法令によって義務付けられているもので、それだけでは職員で役割を分担しても、いざ火災が発生した場合に落ち着いて行動できるかによって被害の大小が分かれる。

 そこで訓練体制は整っているかどうか聞いてみた。キャンパス別では、市ヶ谷は毎年、麹町消防署の講師による講話や、消火栓を使った訓練をしているという。また今年三月十五日には図書館で防災訓練を実施した。また一昨年に利用を開始したボアソナード・タワーでは常駐している防災センター要員が麹町消防署の指導のもとに、災害発生時の通報、避難誘導の訓練を実施している。

 多摩では町田消防署へ本学職員が年数回出張し、訓練を受けている。

 小金井では毎年消防署の講習に本学職員が三人ずつ参加し、消防の知識や技術を共有化しているという。

 だが、いずれのキャンパスでも学生や教員を対象とした防災訓練は実施されていない。

不審なものが!その時大学は

 今年一月、新宿中央公園でゴミ箱が爆発し、近くにいた人が意識不明の重体となった事件が発生した。また昨年十月、米国フロリダ州の新聞編集者が、開封した郵便物に炭そ菌が含まれていたために、死亡した事件が発生している。本学では不審な物や人にどのような対処をしているのか。

 本学構内にはゴミ箱が多数設置してある。ゴミ箱爆発事件後もゴミ箱の数は減らしていない。不審物に関しては巡回で見つけるようにしているというが、昨年の事件後から現在までに特に問題は起きていない模様だ。

 一連の炭そ菌事件を受けて文部科学省が昨年十月二十五日、各大学へ不審な郵便物への対処について万全を尽くすようにとの通達を出した。それにより本学あての郵便物に関しては、郵袋(ゆうたい=郵便物を入れて輸送する袋)から郵便物を取り出す際に、使い捨てのビニール手袋を使用しているという。しかし本学に直接届く小包や宅配便に関しては特に対処はしていないという。

 不審者に関しては、各守衛所でのチェックを強化することと巡回の回数を増やすことで対応している。しかし市ヶ谷の飯田橋門をはじめ、守衛所からの目が行き届かない箇所があり、手薄になることは否めない。総務部は「不審者等をみかけた場合には、守衛所または学生部に連絡を。また、人通りの少ない場所等には、できる限り近づかないように」と呼びかける。

 昨年九月二十一日に市ヶ谷ボアソナード・タワーの二十六階スカイホールで、シンポジウム開催中に何者かによって参加者らが襲われる事件が発生した。しかし事件後も、そこでの講演会や式典の際の警備の強化は特にしていないという。

 例年本学の入学式や学位授与式が行われる九段下の日本武道館では、非常時の対応、避難体制が施設から大学側に義務付けられ、万全を期している。

実際に発生した事件

 今年三月下旬と四月上旬の二度にわたり、市ヶ谷ボアソナード・タワー一階男性用トイレ内で、焦げたトイレットペーパーが床に落ちていたのが発見された。大学では、火災になりかねない悪質ないたずらとみている。

 多摩では昨年九月、女性用トイレ内で暴行事件が発生した(本紙第九五七号で既報)。また市ヶ谷でも九十九年五月、女性用トイレでの盗撮事件が発生している(本紙第九四一号で既報)。

 女性用トイレ内には非常用押しボタンが各ブースに以前から設置されている。設置率は市ヶ谷地区と多摩の経済学部棟では一〇〇%。また、他の学部棟でも今後設置が行われる予定。さらに各ブースでの間仕切りは隙間のないように改良している。監視カメラの設置を望む声があるが、プライバシーの観点や、学生からの同意を得る必要があるため、難しいという。

 特に多摩では、敷地が広大で夜になると人通りもまばらになる。昨年九月のトイレ事件を機に、経済学部棟中庭の照明を明るくし、Vブリッジの照明も夜八時半まで点灯を三十分間、延長した。

 本学では各キャンパスとも、本年度からセキュリティのための予算を増額し、巡回の強化やトイレ内の炎感知器の設置、暗がりでのセンサーライトによる照明設置などを予定している。

 なお、昨年度まで市ヶ谷では、教室内において貴重品を狙った盗難事件が多発していたが、今年度に入ってからは学生部に被害の報告は無いという。

 

 大学の危機管理体制を二ヶ月間にわたって取材した。

 昨年十二月に発生したネットワーク不正侵入事件で、本学情報センターは利用者全員のパスワードを無効とした。その思い切った決断は評価されよう。

 また学生食堂を運営しているシダックスでは、万が一食中毒が発生した場合に備えて、主菜を二週間保存しているように、危機管理体制は整備されている。

 だが、大学で火災などの緊急事態が発生した場合に対する実地の避難訓練は実施されておらず、いざという時、全員の無事を確保できるかどうか不安である。もしもボアソナード・タワーで火災が発生して上層階にいた場合、非常階段で避難するのか。そしてその非常階段の場所を利用者全員が知っているのか。大学側は、火災や地震などの緊急時における対処方法を早急に整備し、学生らに周知させるべきであろう。       

 

  


 

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