転換期の学部教育  〜国際学部編〜


 国際文化学部は設立当初よりSA(スタディーアブロード)プログラムやセメスター制を採用、本学の異質学部として、頭角を現してきた。また、「国際文化情報学会学生役員会」なる学生団体を当学部生が自主的に立ち上げているという。現在の国際文化学部はどうなっているのか、自身も当学部生である記者が実態を訊いた。

  「国際文化情報学会学生役員会」とは何か。

 『文化情報学の確立に貢献する』という理念の元、設立したのがこの役員会である。「Web WorkShop」と銘打つホームページ作成演習や「Movie WorkShop」と銘打つ映像編集作成演習など多彩な勉強会を企画し、参加者達はそれぞれSA壮行会やSA帰国報告会などでその成果を活かしている。なおこの学習会は他学部の学生にも門戸を開いているという。

 この役員会の高江会長と役員会役員である小野さんさらに教職課程受講者である三年生の山下さんより諸処の問題に対し個人的な見解を訊いた。

セメスター制の利点

 国際文化学部は学部開設以来、人間環境学部と共にセメスター制を採用してきた。これは国際文化学部の場合、二年次後期に行われるSAプログラムにより該当期間、本学内での履修が行なえなくなるからである。本年度までは他学部がセメスター制を採用していない、という事もさることながら、文部科学省の新学部開設の規定により他学部の公開科目を履修できないという憂き目にあっていた。この結果当学部の学生は卒業単位の関係上、興味の無い科目まで無理に履修しなくてはならなくなっていた。

実験中のカリキュラム

 三年生山下さん 「文部科学省の規定により学部生の他学部の履修は四年間禁止されている。さらにはカリキュラムの変更も許されていない。本学部は文部科学省による実験段階であるのだ」。

 来年度より、文学部がセメスター制を採用する。また文部科学省による国際文化学部に対する試験運用期間も本年度で終了する事を受け、他学部の公開科目を履修できる様になるという見方が濃厚である。

高江会長 「『学部』は卒業と同時に学士号を学生に与える。国際文化学部であれば、『国際文化学士』という具合にである。どの系列の科目をいくつ取れば良いなどの、学士号の発行条件は、学部が決定する事である。その発行条件については、受験生時代に我々は調べることができるのであるから、それを入学後に批判することには疑問がある。また、教員達も、学部のカリキュラムさえきちんとこなしてくれれば、我々が、幅広い視点を持つ為に、他学部の公開科目を履修する事については歓迎するのではないか」。

もう一つの成人式

さらにSAにおいても、SA参加者の一部を除き現役で入学した学生の大部分は、良くも悪くも日本の伝統文化である『成人式』に参加できない。世界的な文化を学ぶ上で自国の文化も学ぶべきという立場をとっている当学部にとってこれは矛盾するカリキュラムではないだろうか。

高江会長 「『成人式』の目的は、成人としての自覚を持たせることだ。その目的が達成されるのなら、開催場所が日本である必要はない。国際文化部の学生達は各留学先で自主的に成人式を開催しており、国内で開催される成人式とは比べ物にならない経験を得ている。『団体留学』のメリットを活かした一連の成果については、国際文化学部の存在意義を考えさせられる材料のひとつとして全学的に認知されるべきものであると考えている」。

現地を感じる

役員会役員小野さん「SAに行ったからといって、突然自らの人間性を根底から覆すような出来事が突然起こるわけではない。しかし何も変化が無かったという訳ではもちろん無い。私にとってSAは『異文化としてのアメリカ』という存在を実感させてくれた。私はちょうど『9・11』のテロが起こったその近くへの渡航であった。日本では『報復攻撃賛成が九割を超えている』なんていわれていたらしいが、実際には私の周りには報復反対者が多かった事からも明らかなようにその報道は虚偽であった。これは日本に居ては理解する事が出来ない実感である。SAプログラムは語学力の向上や劇的な留学体験を求めるものではなく、日常生活を通して異文化の実態を経験的に理解するものだと思う」。

 確かにSAは日頃日本国内の大学でただ学んでいては理解できないような異文化を実体験し、それを通し改めて『成人式』のような日本文化を意識する事が出来るというメリットはある。しかしその長時間の本学でのブランクは、一部の学生には大変な事態を引き起こしているようだ。

厳しい資格科目

三年生山下さん 「SAによって教職やその他の資格科目をとることは確かに厳しくなる。一年次に履修を認められていない通年科目は実質的に三年に取るしかない。その結果、他の学部生は四年目を教育実習のみを残して迎えられる人がほとんどのようだが、自分は教育実習の他に二科目と更に一年次に教職優先と考えて履修しなかった市ヶ谷基礎科目が一科目残っている。他学部の学生に比べ常に一科目も落とせない、『後が無い』というものは辛いものがある。学部の単位と資格の単位が半々の状態でこれでは学部の授業にきてるのだか、資格の授業にきてるのだかわからない」。

 それでは、SAの就職における効果はあったのだろうか。就職部によると徐々に報告は入って来ているというが、まだ全体像を把握するまでには至っていないようだ。

高江会長 「語学留学をしている学生は、他学部・他大学にも無数におり、その価値は暴落中であると言ってよい。語学留学は一種のファッションとなっている事について多くの企業はきちんと認識している。その意味で、留学というラベルだけを就職活動中に持ち出したときには、得をするどころか、マイナスとして評価される事もあると言っていい。しかし一方でSA単体ではなく、SA前・SA中・SA後、のカリキュラムとの有機的な結びつきを理解し、その理解に基づいた自己アピールができれば、就職に有利になるに違いない」。

 

 以上のように本年度までの国際文化学部のカリキュラムは文部科学省による規約的拘束もあり、全体的に成果も抽象的であり、「学問」としては不備があったと言わざるをえない。また慶応大学SFCも国際文化学部と同様なカリキュラムを持っている。さらに早稲田大学にも類似したカリキュラムを持つ学部が新設される予定だ。この様な同規模他大学との差別化をどうはかっていくかが今後の課題となるだろう。来年度より自由なカリキュラム改編を行なえるようになる国際文化学部、今までのように、役員会のような魅力的な学生活動に頼らず『迷走』脱出なるか。全てはまだ始まったばかりだ。  〈取材・文〉荒木要治

 

  


 

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