国際文化学部設立後、初のスタディーアブロードプログラム(SAプログラム)が開始され、三ヶ月が経過した。このプログラムは国際文化学部二年次の後期に行われ、現在、二年生全員が世界九カ国に分かれて留学している。

 準備段階では、留学先によっては、入国に関する情報の不足や、ホームステイ先の決定が遅れ、学生から強い不満が出るなどのトラブルもあった。しかし現在、学生たちはそれぞれの留学先で、充実した学生生活を送っているようだ。 彼らの留学生活を充実させている要素の一つに、SA分科会という活動がある。

SA分科会

  SA分科会は、SA(留学)先ごとの、学生の自主的な集まりだ。留学先の国や都市について調べるといった情報収集や、留学先での授業にむけた事前学習などの、SAに向けた準備をする。さらに、実際にSA先で得た情報を、次の学年の分科会に伝えていくことで、SAプログラム自体の質を向上させていく、長期的な活動だ。留学先ごとの、学生同士の人間関係が広がるのも魅力だ。その活動のための媒体として、各留学先の分科会がホームページを設置している。 そして、SA期間中に、留学先ごとの分科会をつないでいるのが、SABBS(http://www.takae.org/)  という、インターネット上の掲示板だ。
 ここには世界各国に留学している国際文化学部の二年生たちから、連日画像付きの投稿が行われている。
  これを見れば、世界中に散らばっていても、同じ学部の仲間の様子を写真付きで知ることができる。日本にいる一年生も、次々と入ってくる、留学先の先輩からの情報を見ることができる。SABBSを作る計画は、一九九九年度の、第一回学生チャレンジサポート計画にも採用された。
  SA分科会への反応 SA分科会の活動は、ホームページやSABBSを設置することから、大学進学を希望する受験生や、SAに関心を持つ人への情報提供の役割も果たしている。

SA文化会への反応

 今秋、国際文化学部の自己推薦入試に合格した、江頭愛さんは、もともと韓国について勉強したいという思いから、国際文化学部を志望した。入試の一ヶ月ほど前、受験や、入学後の心境の変化に対する不安を抱えていたという。そんな時、高江さんのホームページを見てSA分科会を知った。そしてその学ぶことへの熱心さに感銘を受け、早く後輩になりたい、という気持ちに駆られたという。そして無事、合格を手にした。
 SA分科会を知って、受験しようという気持ちを後押ししてもらったという江頭さん。「今はとにかく期待でいっぱいです」と語る。
  SA分科会は、学部内の教員からの評判も良い。
  その活動を積極的にサポートし、何度かSABBSに投稿している鈴木晶教授は「SABBSは海外にいる学生の様子が写真入りでわかって、貴重な情報源になっています。」と語る。中心となっている学生たちの熱意についても、これまでにいなかった、熱心な学生だ、と高く評価している。
  しかし、今後の活動については、今年のSABBSが、挨拶や生活の様子を伝える程度の情報交換で終わっていることに触れ「今後はよりアカデミックなやり取りを期待しています」と要望を出す。

分科会の本旨

  SABBS投稿規定によれば、投稿して良い内容は、「文化情報またはそれに関連するもの」だ。文化情報とは、国際文化学部の柱である「文化情報学」という学問の核となる新しい概念だ。教員の間でも、共通の理解はないという。
 それについて、投稿者に考えてもらうのが投稿規定のねらいだ。「みんなが、それぞれ自分が文化情報だと思ったものを投稿する。学生・教員・職員、みんなで文化情報ってものを考える基盤になればいいと思う」と、高江遊さんは語る。
  SA分科会は本来、学問的な目的を本旨としている。
  現在、国際文化学部には、四年間のカリキュラムの半期分に過ぎないSAプログラムに、学生の意識が偏りすぎるという問題がある。
  実際、国際文化学部の一年生の中からは、二年の後期にSAが控えているために、その後のゼミなどの学習目標については、あまり考えが回らない、という声が聞かれる。
  三年次以降の授業はまだ行われていない。実際にSAが終われば、学生の意識はその後の授業に向くかもしれない。しかし、留学前の時期からは、四年間で何を学ぶのか、という視点を持ちづらいのが現状だ。
  そのような状況を改善することが、SA分科会活動の本旨だ。「SA先でのカリキュラムについて事前に学習し、ある程度理解しておくことで、SA先での学習を充実させ、その中からSA後の学習目標を見つけられれば一番いい」と高江さん。
  しかし、現時点では、発足したばかりのSA分科会の存在は、まだ国際文化学部生の中にそれほど浸透していない。
 高江さんは、今はそのような状態でも、何年か後により多くの人が参加し、理想の形になってくれればいい、と言う。「何年か先からはSABBSでのより学問的なやりとりを期待する。現在の状態をまずは維持した上で、(後に続く人達に)さらに上の次元を目指していってほしいです」。
 未来を見据えた活動は、長い期間をかけ、段階を踏みながら、徐々に理想に近づけていかなければならないのだろう。
 SA先ごとに集まり、留学生活を充実させるという、同じ目標に向って活動する中で、より多くの友人を得ることができる。それらの集まり同士が交流すれば、さらに学部内での人間関係が広がる。たくさんの友人を得られることは、個人にとって有益だし、学生同士の交流が盛んになれば、より活気のある、魅力的な学部ができる。
  広い人間関係の中で、勉強の面でのコミュニケーションも活発になっていけば、さらに充実した大学生活を送ることができ、それを継続していけば、さらに魅力ある学部を作っていくこともできるはずだ。
  五年、十年とSA分科会が続き、発展していった時、国際文化学部の姿は、どのようなものになっているのだろうか。

 



 

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