「私はA社から内定を頂いた者ですが、迷ってます。確かに志望動機も高く、行きたいと思って頑張ってきたのですが、いざ内定がでて、これで本当に私の就職活動が終わってしまって良いものかどうか・・・」

  「某銀行から内定を頂いたのですが、ここに来て迷い始めました。なぜ銀行が良いのか。ちゃんと自分で本当にやりたいことを考える時間が持てなかったので、ひたすら内定に突っ走っていた自分が急に不安になりました」

 インターネットのある就職支援サイトの掲示板への書き込みだ。面と向かって相談しにくいのだろう、同じような、内定先への不安を露わにする書き込みが多数見られる。

 厳しい就職活動を終え、内定を得てから入社までの約一年、内定先へ入社するか悩む学生が、ここ数年で急増している。「憂鬱な」という意味で「ブルー」を使う、いわゆる「内定ブルー」という症状だ。その症状は法大生にも蔓延している。「確かにここ数年でそういう学生は増えてきていますね。七月にある学生が就職部に相談に来ました。その学生はいくつか内定を決めていたのですが、最終的にどこへ行くのか自分で決められないと言うのです」と就職部長は語った。

 長引く不況により、どの企業も先行き不安で、安定した職業のなくなった今日、それだけに学生の就職に対する意識も高まっているはずだ。その厳しい現状の中で、勝ち取ったはずの内定。就職活動をする学生が最も欲して止まないそれに、なぜ不安を抱くのであろうか。就職アナリストであり、「内定ブルー」の名付けの第一人者である鈴木明さんに話を訊いた。「就職協定の廃止により、早期化された就職活動の中で、企業研究が十分にできていなかったり、ネットでの就活が主流になる一方で、情報量が多すぎて対応できずに、周りの意見に流されてしまう。また、OB・OG訪問などの、実際に企業に足を運び、話を聞いたりする実体験の不足という現状から来るものでしょう」

 就職協定の廃止以降、内定時期が年々早まっている。就職情報出版の学生援護会が今年度まとめたアンケート(六月上旬実施)によると、来春四年制大学を卒業見込みの学生の内定をもらった時期は「四月下旬〜五月上旬」がピークで、前年の「五月中旬」より半月ほど前倒しになっている。「就職活動を始めてすぐに大学の後期試験が始まり、二月にはエントリーシートの締め切りが来ます。そんな中で十分な企業研究をできるでしょうか」と鈴木さん。「内定ブルー」は現在の就活の時間の無さが呼び水となっているようだ。また、ある企業で採用担当をしていた方は「『内定ブルー』になるのは、自己分析が十分に出来ていないためでしょう。『自分はこの会社でどういうことをやるのか』を明確にし、ライフプランでの就職を考えて下さい。就職はゴールではなくスタートなのですから」と自己分析の重要性を強調する。

 不況、就活時における情報量の過多、時間の無さ。「内定ブルー」はこれらの諸要素が絡み合って発生した、「現代就活病」と言える。この症状への処方箋は、就職活動を前にして、自分にとっての「働くことの意義」をじっくりと考慮し、確立させることではないだろうか。

 



 

COPYRIGHT(C)法政大学新聞学会

このホームページにおける全ての掲載記事・写真の著作権は法政大学新聞学会に帰属します。

無断転載・流用は禁止します。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送