学生が企業で一定期間就業体験をするインターンシップ。九六年に就職協定が廃止されたことに伴い増加し、現在では数年前とは比較にならないほど実施企業も急増し広まってきた。会社がどういうところか、働くとはどういうことかを知り、職業観や倫理観を身につけられる点で就職活動に役立つ。しかしその一方、様々な問題点も出ている。そこでインターンシップの実情に焦点を当てる。

経験者に聞く

 日立、ソニーへのインターン経験を持つ高江遊さん(本学国際文化学部四年)は組織運営の知識を得るために参加した。子会社の今後の方針や国際人事制度の見直しを自分なりに考え、成果を評価してもらったり、部長クラスの会議にも出席したという。「『感じる』レベルに初めて達することのできるのがインターンシップだと思うよ」と振り返る。本で読んで「知る」だけではわからない、企業の雰囲気を直に「感じる」ことは最大のメリットの一つだ。就職活動の早期化のために一体何をしたいのか考える間もなく内定してしまったことからくる、仕事への疑問が引き起こす内定辞退を防ぐことにもなる。 また、「企業の人は目が厳しいから自分のいいところ、悪いところを非常に的確に指摘してくれて。実際その通りだと思った」と話す。初めて企業で働くことで客観的に自身を見つめ直す機会にもなる。高江さんはソニーに入社を決めている。「あの中でやっていけるのかという不安はあるが、彼らと一緒に仕事ができるという期待もある」と今の心境を話すのも、実際に現場を見てこその気持ちだろう。

問題点は

 本学就職部に聞いたところ、インターンシップを受け入れようという企業も、参加したいという学生も増えているそうだ。しかし、「首都圏の大企業には応募が殺到して企業の手が足りていない一方で、中小企業には学生が集まりません」というように需要と供給のバランスが取れていない。大企業に人気が集まるのは、やはりインターンシップが採用に有利だと思ってしまうからだろう。そのため学生の間には、とりあえず参加すればいいという雰囲気が蔓延してしまっている。しかしインターン経験者の優先的採用については「それはないです。企業は欲しい人材に見合った人を採用しますよ」と就職部長は否定する。

企業選びには慎重に

 いざ企業に行ってみると、事前に提示してあった仕事内容とは大幅に違うことをやらされることがある。インターンシップはほぼ無報酬であることが多いので、その名を借りて学生をただの雑用係として利用しようという事態が広がっている。

 また、詐欺まがいの被害が出ている。「海外研修ツアー」と銘打った海外インターンシップを装って契約し、いざ現地に行ってみると受け入れ先企業がなかったケースなどだ。このような事態を受け、約三十社の関連企業が登録する海外留学事業団体協議会では、事前に説明すべきポイントや契約方法についてのガイドラインを検討中だ。業者側は自主規制で信頼獲得に動き出した。学生としても確固たる目標を持ち、相手の意向を見抜く力をもたなければならない。

企業のねらい

 就職部長は「インターンシップには企業側のマイナス要素もある」と言う。学生をどの部署へ配属し何をやらせるかといった計画や、社員が学生にかける時間や手間は避けられない。まして社員や新採用者数の削減で、会社の軽量化を図るような経済事情なのだから負担はかかる。

自分次第

 しかしながら、「入社後、予想していたものと現実にギャップを感じてしまう早期退職者の増加を考慮すれば、その退職率低下に繋がるのではないか」という期待もかかる。 規制や法律がインターンシップの急増に追いつかない中で、学生に求められるものは目的意識だろう。自分がインターンシップで何をやりたいのかを明確にしなければ、後に残るものは少ない。そして、我々学生が企業という社会に飛び込むときは、社会の一員として働くという意識を持って臨むべきだ。それを怠ってはアルバイトとは異次元の世界で仕事をする際に、決して良い結果は生まれない。インターンシップを自分のプラスになる時間にするためには、まわりに流されない強い意志を持つことが何より大切だろう。

 



 

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