インターンシップ実行への道


 大学三年生にとってはいよいよ本格的に就職活動を意識する季節となった。しかし、一口に就職活動といっても「そもそも『仕事をする』ということ自体よくわからないし…」といった人も多いだろう。そんな人たちにぜひ考えてもらいたいのが、近年流行っているインターンシップ。本格的に就職する前に仕事の体験ができるとあって非常に人気だが、その実態はどうなのか。体験者の話を踏まえながら実際の流れを追ってみたい。

何をしたいのか

 そもそもインターンシップとはどのように定義されているのか。文科省の定義によれば、「学生が自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」となっている。

 また、インターンシップは、おおまかに見学型・体験型の二つにわけることができると言われており、自分の目的や、考えに合わせて選ぶことが重要だ。「そんなことよくわからない」という人も多いだろうが、そういった場合過去に体験した先輩の話を聞くことをお勧めする。そうすれば漠然とでもイメージはつかめるはずだ。

受け入れ先を探す

 やると決めたら次は実際の受け入れ先を探すことになる。最近は企業側も積極的にインターン生を受け入れている。本格的に就職活動を始める前に仕事内容を学生に知ってもらうことによって、企業と学生の仕事に対する考え方のギャップを埋めることができるというメリットが企業側にもあるためだ。

 大学でもいくつかの受け入れ先を扱っているほか、インターネットでの就職情報サイトでも多数扱っている。また、地方自治体や、中小企業などでは直接募集をかけることもある。とにかくこまめに情報集めをしていこう。

申し込む

 やりたい企業が決まったら実際に申し込むことになる。近年の人気を受けて、大抵の企業では応募者の方が多く、選考になる。選考の仕方は様々だが、書類選考のあと面接というパターンが多いようだ。ただしインターンシップの場合は地域や男女差、一つの大学に集中しないかといったバランスを重視するので必ずしも優秀であれば通る、という訳ではない。採用されなかったからといって、落ち込まないでほしい。

実際に働く

 晴れて決まったらいよいよインターンシップの始まりである。ここでは実際に去年働いていた三人の学生の話を中心に進めていく。

 「僕は見学型でしたね。実際に営業から工場まで様々な部門をまわって見学させてもらいました」。大手電機メーカーでインターンシップを行ったAさん。慣れるまではなかなか大変だったようだ。「毎朝早く起きてスーツを着て会社に行き、夜遅く帰ってくる。この繰り返しだけでも最初は大変でしたね。でも働くことの厳しさを身を持って知れたし、色々な業種の仕事の内容に触れられたというのはとても貴重な体験でした」

 これに対しBさんの場合は完全に体験型。「行ったところが中小企業だったんですよ。社員が五十人に満たない旅行代理店で。だから会社の方針を決める会議や、実際の顧客獲得の電話なんかもさせてもらいました」

 しかしその分内容は非常にハードだったという。「三日くらい家に帰らない時もありましたね。明け方まで仕事をやって、仮眠をとってまた朝から働く、みたいな」。それでもBさんは非常に楽しかったと振り返る。 「あんな体験めったにできるものじゃないですしね。それに自分の意見が通ってそれに向かってみんなで動くときなどは本当に頑張って良かった、と思いました」

 Cさんの場合は非常に特殊といえる。「私は知り合いの紹介でドイツの企業でインターンシップを行いました。最初はほとんどコミュニケーションがとれなくて苦労しました」。しかし、そんな過酷な状況でもCさんは様々なものを得たようだ。「ドイツの企業の方が良い点もあれば、日本の方が良い点もあった。そういった比較を生で感じることができただけでも大きな収穫でした。また、その体験を通して何でもやってやれないことはない、と思えるようにもなりましたね」

 しかしそんなインターンシップで失敗してしまった人も少なからずいる。地方団体でインターンシップを行ったDさんの場合は大きな成果は得られなかったという。「単純なデータ入力の繰り返しばかりでした。想像していた内容とはずいぶん異なりましたね。また、周りは公務員志望の人ばかりだったので、そうでない自分は少し場違いな感じでした」。やはり一言でインターンシップといっても自分の目的に合わせて選ばなければあまり意味はないようだ。

仕事に伴うリスク

 しかし、しっかりとした目的意識さえ持っていればインターンシップは良いところだらけなのだろうか。残念ながらインターンシップにも少なからずリスクが存在するのも事実だ。

 まず学生側のリスクとしては、目的とのミスマッチ(学生をアルバイトあるいはお客様として扱う)といったことが挙げられる。ここでの企業と学生との温度差が激しいと、意味のないインターンシップになってしまうばかりか、今後の仕事に対する情熱も失われかねない。この問題に対する対処法としては、やはり事前の入念な下調べしかないだろう。また、あまりに記載内容と実際の内容がかけ離れている場合は各地方自治体にある経営者協会や労働基準監督庁に相談してみる手もある。

 また、企業側のリスクとしては、@学生が通勤中や実習中に被災する事故A学生が実習先の什器などを破損、商取引を妨害するなど、学生の行為による損害B学生による機密の漏洩などがあり、このような理由からいまだインターンシップ制度を採用しない企業も多い。

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 インターンシップ制度は最近急激に流行ってきているとはいえ、日本ではまだまだ新しい制度であり、様々な不備も残されている。しかし、成功した三人は「やって良かった」と口をそろえる。就職活動に対して高い意識で望むことが前提であり、その形の一つとしてインターンシップがある。最初のピークの時期である夏は過ぎたが、まだまだたくさんの企業が募集を行っている。少しでも興味を持った人はぜひ、色々と調べてみてほしい。

 



 

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