国際文化学部就職検証

第一期卒業生に聞く 就職状況とその本音


 近年の長引く不況の余波を受け、いまだ新卒者の採用は厳しいのが現状である。その一方、大学の新学部・学科設立は首都圏を中心に年々増加傾向をたどっている。また、そのカリキュラムも従来のものと比較すると、他大学との格差を図ってか特色の濃いものが多い。今回は一九九九年、本学に新設された国際文化学部に焦点を絞り、昨年度輩出された第一期卒業生へのインタビューと、就職先分布を示すグラフをもとに、同学部の就職実状とその本音を検証する。

就職状況外部公開

 同学部の就職状況は、今年度の学部パンフレットで初めて外部公開となった。また、この夏のオープンキャンパスの学部・学科説明会では、学生も交えて就職状況を含めたプレゼンテーションが行われた。「昨年度までは、就職先を予想する形でのプレゼンだったので、説明の際に曖昧な表現を使うなど、ものすごく苦労した。今年からは具体的な就職先が提示できるようになったこともあり、就職に対して今まで以上に積極的なアピールをしていきたい」と同学務部職員は語る。

データから見る就職先

 実際、その内訳をみると、情報・サービス・建築設計が三二%の割合を占めている。逆に当初は英語教員などで予想されていた教育は五%にとどまっている。サービス業には、航空・出版・飲食店・観光などが含まれているが、それらと全体の一二%を占める製造業への就職はほぼ同率であった。全体的に見ると、国際色はそれほど強くはなく、むしろ情報系企業への就職が目立つ。(注・これらのデータには、今年度の就職内定者は含まれない)

SAは就職に有利か

  同学部では、二本柱として「語学」と「情報」が掲げられているが、これらの成果や反応は、職種の異なる卒業生によって様々であった。 「確かにロシア語やスペイン語を会話ができるまで勉強するうちの学部は珍しいけど、実際に国際社会で使う言語のほとんどは英語だからね。その英語だって、他の大学で力を入れている所はたくさんあるから」(OB・貿易商社勤務)。「SA(スタディ・アブロード)で学んだ語学は私にとってはすごく重要だった。でももっと重要なのは、それを帰国後も継続させる力だと思う。だから、三・四年次のカリキュラムで語学を実践的に使う授業が少なかったのは少し残念だったかな」(OG・卸業社勤務)

 SAでの体験は貴重であった、というのが一致した意見である。しかし、それは現地での生活を含めた国際交流や、その後のゼミの研究テーマとしての色合いが強く、SAでの語学のスキルがそのまま就職活動で通用するという安易な考え方はすべきではないと卒業生は指摘する。

文化系学部の弱み

 そしてこれは「情報」に関しても同じことが言える。

 「カリキュラム自体が、学部の意図として役に立ったかと言えばNO。文化系なので、就職の直接的な強みに結びつけるのは業界・職種共に難しい」(OB・通信企業勤務)。それでも、PCリテラシー、ネットワークコミュニケーションなど、実務でも役立っているものもあるという。現状として、メーカーの就職者の大多数は理系学部生で占められている。同学部で学ぶ情報学のスキルは、就職後に活用し、評価されることが多いようだ。

学部アピールの葛藤

 就職活動における他学部との差異は、どの学部も少なからず感じることだが、同学部の場合、他者との比較より、学部を表現することへの内面的な葛藤があったようだ。

 「文化情報学という観念的なものを学んでいたため、学術的なアピールをするよりも、やってきた事実を説明しなくてはならなかったので、経済や経営といった、就職に直結できる、かつ確立されたビジョンのある学問を学んでいる人たちを羨ましく思った」(OB・通信企業勤務)。「なぜか、英語=英文科という固定概念があるようで、SAで半年間留学したと言わない限り、語学重視の学部ということが伝わらなかった気がします。話すという点では、英文学科よりも実践的だと思うのですが」(OG・教育出版社勤務)。「あらかじめ明確に設定された専門性・専攻がない学部なので、何を学んできたかという問いに対して、自分をしっかり持っていないと回答することができない」(OB・製造業社勤務)

 学部の理念として掲げる「文化情報の受発信」も、そのジャンル自体がまだ確立されていない今日では、いまだカリキュラムやコースの変更など試行錯誤が続いている。第一期卒業生にとって、具体的な指針のない観念的な理念を自分の大学生活と結びつけ、説明するというのは困難を極めた、という感が見受けられる。

不明瞭な就職傾向

 同学部では、今年度から国際文化学科と文化情報学科とに分けた。後者はSAを夏期休暇中に行うことで、後期の情報系授業に力を注ぐことを目的にしたもので、来年度初の実施となる。これは、情報・サービス業への就職状況を強く意識しているものと言えるだろう。これが吉と出るか凶と出るかは四年後までわからない。それまでに就職状況は大幅な変動を見せているかもしれない。

  「国際文化学部のカリキュラムは選択肢が非常に多いので、卒業した時点での学習体系は個人によって大幅に異なる。よって就職活動及び就職先において、学部で学習した内容が生かされるかどうかも、個人の選択と努力、意識によって大幅に異なるといえる」(OB・製造業社勤務)

求められる自主性

 これらの現状と卒業生のコメントについて、谷口浩就職部長はこう語る。「就職活動における現在の学生は、非常に噂に流されやすい。これは憂慮すべき問題だ。企業が本当に見るのは資格などではなく、その人がどういう人物であり、企業で活躍できるかどうかである。そのためにも、自分は四年間の大学生活で、また学部の中で何を学び、どう変わったかを就職活動時に主張できる学生であってほしい」

検証結果と考察

 今回、試験的な要素の強い同学部の就職実状とその本音を検証し、新設学部というもの以上に、同学部はその理念における不安定さ、曖昧さを改めて露呈する結果となった。今後、分割されたコースがその改善策となるかどうかは疑問だが、すべては今後にかかっている。学生が学部の理念を自分のものとして体得しない限り、国際文化学部を就職でアピールすることは難しい。学生の意識がないところに「就職」はないのだ。

 



 

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