本学OG セガ開発子会社「ヒットメーカー」社長

熊谷美恵さんインタビュー


 ゲーム業界としては珍しい女性社長は、白いシャツに黒のパンツ姿で颯爽と社長室に現れた。最近マスコミで取り上げられる際、必ずと言ってよいほど「女性」であることがクローズアップされる。だが熊谷社長は、「すごく違和感を感じてます。自分では性別など全く意識してなかったので、報道によって、これって価値のあることなんだと知って驚いたくらい」と笑う。その姿に「女性社長」の気負いは微塵も感じられない。

 熊谷社長の経歴は興味深い。実はヒットメーカーは三社目なのだ。学生時代からイベントの企画・運営をすることが好きだった社長は、スポーツや芸術活動に投資することに前向きなアートコンサルティング会社に入社するも、会社は半年で倒産してしまう。どこに自分の夢を再設定して突き進めばよいのか悩んでいたところ、前会社の得意先の人から声がかかり、紳士服の専門会社へ進む。ここでは経営企画のアシスタント業務などを担当し、働くことのおもしろさを実感できた。しかし、紳士服を自分が着ることはないために商品との距離を感じ、もっと自分に近いものを求めて退社。

 そんな時、テーマパーク事業を展開しようとしていたセガの中途採用を受ける。「ここなら学生時代から興味があり、前の二つの職場で培ってきたリサーチや企画力の手腕を生かせると思いました」

 アトラクションなどのプランナーを経て、ゲーム畑へ。実は入社前、ゲームで遊んだことはほとんどなかった。しかし、何かを企画する前段階で物事のおもしろさの本質を問う姿勢は、学生時代から一貫していた。「例えば絵画やドラマを見たときに、これらのおもしろさの本質は何だろう、と一生懸命考える。そうするといくつかポイントが出てきて、自分の中に辞書ができていくみたいな感じになるわけです。こうして今までやってきたことは物事を創造していくときに活きていると思いますね」

 フットワークは軽く、常にアンテナは高く。そのポリシーは社長となった今も変わらない。

 転職を経験し、会社のトップにまで登りつめた熊谷社長に、女子学生の就職について聞いてみた。すると、「女性は一般職か総合職かで悩むかもしれないけど、自分はそれにこだわることなく、就活中も『私はこういうことがやりたいんです』と素直にアピールしてきました。職場に入ってからも、仕事をする上で男性女性の隔たりを感じたことはないですね」と話す。

 会社のトップとは、熊谷社長にとってゴールではなく新たなスタートラインだ。

 セガには七つの子会社があるが、「セガのゲームはおもしろい。そしてそのゲームを作っているのはヒットメーカーだというくらいのリーディングカンパニーにしたい」

 女性であることを理由に仕事に制限がつく時代は過ぎ去ったのかもしれない。熊谷社長は就職を控える私たち学生の中に、さわやかな風を送り込んでくれた気がした。

     (鈴木敬子)

 



 

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