大和市役所

職員採用における 非喫煙者優遇


今年六月WHO(世界保健機関)で「たばこ規制枠組み条約」を採択するなど、世界中でたばこの害への注目が高まり、禁煙の動きが広まっている。日本でも、五月一日からの「健康増進法」施行をはじめ、青森市が就職試験会場を禁煙にして喫煙した時点で退室としたり、女性インナーメーカー・トリンプが禁煙奨励金制度を導入して職員に禁煙を促したりと、就職活動の場や職場での禁煙対策が進められている。その中、神奈川県大和市は自治体としては珍しく、今年から職員採用においての非喫煙者優遇を発表した。今後、喫煙者・非喫煙者ということが、就職活動やその後の職場でどう影響していくのだろうか。

健康増進法の施行に伴い

 大和市では約十年前から「衛生委員会」を立ち上げ、分煙対策を行ってきた。喫煙コーナーへの空気清浄機の設置による分煙対策を実施していたが、その後、空気清浄機だけでは効果がないとの研究結果も出ており、従来の分煙対策が疑問視されていた。

 五月の健康増進法施行で、空間分煙が施設管理者に義務付けられた以上、より実効性のある対策が求められた。そこで、採用の段階から禁煙の意識を促そうと、喫煙者と非喫煙者が合格ライン上に同点で並んだ場合は非喫煙者を優先採用する、という今回の制度導入に至った。

禁煙が職場の適応能力に

 この制度の報道後、市民からは多くの意見が寄せられている。反対意見の多くは「嗜好で人を区別する人権侵害だ」「公務員の採用は能力主義であるべきだ」が主な理由だそうだ。それに対し、大和市職員課では「今回の制度は喫煙者の排除ではなく、勤務時間内の禁煙を求めています。喫煙者でも勤務時間内の禁煙ができれば非喫煙者として扱う。非喫煙者か喫煙者かで判定しているのではなく、勤務中に禁煙することで職場に適応する能力があるかどうかで判定するのです」と話す。

 実際に七月に行われた採用試験の二次試験で受験者全員に喫煙の有無を確認した。受験者数八十一人のうち、七人が喫煙すると答えた。しかし七人とも勤務時間中は禁煙すると答えたため、非喫煙者として扱ったという。

職員達の喫煙事情

 今後、現職員への禁煙対策も強化していく。「喫煙所までの往復時間も入れると、休息時間だけで喫煙を続けることは不可能に近い。休息時間を超えた喫煙は職務にも影響する」と職員課が話すように、昼休み以外に認められているのは、休息時間のみ。休息時間とは手を休めるために認められる時間で、午前・午後それぞれ合計十五分しかない。庁舎内禁煙の現状では外まで出なくてはならず、一本吸うのに二分かかるとすると、往復を含めて五分ほどかかる。三回喫煙すると休息時間は使いきり、そのほかに手を休める時間はなくなってしまう。今回の非喫煙者優遇というのも職員の禁煙対策の一環として行われているのだ。

 職員たちからは、「これも時代の流れだから仕方がないのかな」「たばこを吸う職員の数もどんどん減ってるし…。そろそろおれも禁煙しなきゃだめかなあ」などという意見が出ている。

就職活動から喫煙を考える

 喫煙は合法である限り、嗜好の自由が認められている。しかし、喫煙は喫煙者本人だけの問題ではなく、周りに受動喫煙の害を負わせるので制限を設ける必要がある。近年の禁煙を促す流れの中で、喫煙者にとっては、ますます規制が強くなっていくだろう。今後、就職活動を行ううえで、喫煙マナーを含め、喫煙について考えてみてはどうだろうか。     

(石井悠美子)

 



 

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