大学には図書館がある。読書はもちろんのこと、レポートや研究の資料探し、また、勉強できる環境を求めて、学生は図書館に足を運ぶ。では、図書館は学生に何ができるのか。そう考えた本学図書館が、「サービスの向上」と銘打ち、今年度から開館日の拡大、千代田区民への開放など様々な取り組みを始めた。図書館の目指すサービスの向上とは、一体どんなものなのか。そしてそれはどのように取り組まれているのか。

開館時間変更

 夜十時。閉館時間の図書館から、何人もの学生が出てくる。開館時間が延長になったことで、市ヶ谷では最終授業の終了後でも図書館を利用できるようになった。多摩、小金井でも休日などそれぞれ開館時間が延長された。

  「長期休暇中も開けてくれるなら、レポートができて嬉しい」と、図書館から出てきた文学部の学生は語った。夏季休業中の連続閉館の見直し、休日の開館日の増設を行い、開館日も大幅に拡大された。

学生からの投書

  「図書館の最大のサービスは、カウンターがいつでも開いている、つまり、貸し出し、返却がいつでもできるということだと思う」と白井館長は話す。

 市ヶ谷図書館の一階には、学生からの図書館への要望を投書できるコーナーがある。投書にも、開館時間の延長を求める声が多くあったという。ライブラリーカードは、今年度から卒業生や通教生、また学外の図書館利用者のみが使用し、一般学生は学生証で、入館も本を借りることもできるようになった。これも投書を通じた学生の声を反映した。「週一回は、投書すべてを見て一つ一つ返答を出し、掲示したり、学生が閲覧できるようにファイルにまとめたりしています」と館長は語る。

紀伊国屋への業務委託

 ではなぜ、開館時間の延長や、開館日の拡大が可能になったのか。

 館長は「今年度からカウンター業務を紀伊國屋に委託しているため」と、説明する。カウンター業務とは、つまり本の貸し出し、返却の業務である。これを業務委託することによって開館時間の延長、休日の開館も可能になった。現在、カウンター業務は、市ヶ谷は十六時までを大学の職員が行い、それ以降の時間は紀伊國屋の社員が受け持っている。多摩と小金井のカウンター業務は、終日、紀伊國屋の社員が行っている。大学の職員は通常の人事異動によって、学生部や学務部に移った。

 「開館時間の延長の要望に応えるために、どうしたらいいか。他大の取り組みなども、かなり詳細に調べた」と館長は語る。その結果、紀伊国屋へのカウンター業務委託を決めたという。

  しかしそれには、理事会での承認が必要だった。図書館は理事会に理解を得られるよう、綿密な企画書を提出した。だが外注をするということは、大学の予算を動かす、ということだった。学生へのサービス向上のためとはいえ、これは容易なことではない。これまで新学部設立やキャンパスの開発など、外側に力を入れてきた大学経営陣の目には、学生への具体的なサービスの提案はどのように映ったのだろうか。

 そして、二ヵ月後ようやく承認を得て、学生の要望に応えることができた。

利用者層拡大

 また今年度から、「千代田区民への開放」という取り組みを行っている。今年三月に千代田区立図書館と本学図書館の相互協力覚書の調印式が行われ、双方の図書館が相互協力に尽力することで合意した。その覚書の中で、『地域住民への開放の視点から千代田区民に一定の条件の下で市ヶ谷図書館の利用を認める』とある。さらに区立図書館が司書課程の実習生の研修を受け入れるともあり、所蔵資料に限らない相互協力も行われることになっている。昨年、千代田区の教育委員会が図書館を訪れた時、「地域との交流を図れるいい機会」と考え、館長はこの提案を承諾した。

  「地域住民以外にもこれからもさらなる図書館利用者層の拡大を考えていきたい」と館長は話す。

 しかし、図書館利用者層の拡大を考えると、借りたい本が借りられている、といういわゆる本の重複や、資料検索のためのOPAC利用の混雑が予想される。こうした理由もあり、外部利用者には「一定の条件」がつく。

  「利用者層の拡大を考えたとき、学生が使えない状況も生まれてしまうのではないか、というのが一番の課題。これからもよく検討していきたい」と館長は語った。

積極的な姿勢

 好きな時に好きな本を読みたい、と思う。だが図書館というシステムが作られたときに制限されてしまう部分がでてくる。しかしその中でも利用者にどう満足してもらうかを考慮し行動に移す、また、現状に甘んじないという積極的な姿勢をこれからも貫くべきである。そしてそんな受け入れる姿勢に対し、利用者もさらに積極的に意見を述べていくべきではないか。発し、受け止める。これが積み重なって図書館がさらに躍進していくことを願う。

 



 

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