国際文化学部 森村ゼミ

公開ゼミの扉をたたく   


 五月二十八日・六月十一日の二度にわたり、国際文化学部森村ゼミによる公開ゼミが実施された。同学部では今日、ゼミを模擬体験できる制度が存在しないため、学部生はSA(スタディ・アブロード)後まもなくのゼミ説明会のみで希望先を決定しなければならない。登録時に選択の幅を広げ、他のゼミと情報交換を図ることを可能にするために、現在の閉鎖的なゼミ制度を改善すべく行われた森村ゼミの試みは、果たしてどのような結果となったのか。

 「今度うちのゼミ公開するから」。その言葉に初めは何の疑問も感動も抱かなかったが、後々考えてみると、これは非常に意義のあることである。国際文化学部では二〇〇〇年度に一度、学部主催によるゼミ見学会が行われている。これは、学生がゼミ登録前に、多数のゼミを模擬体験できる制度であったが、「後期にSAへ行ってしまうためあまり効果がない」「三年の初めにゼミ説明会をした方が効果は高いのではないか」という意見が教授内から出始め、翌年廃止となってしまった。

  しかし、今回それを良しとせず、ゼミ登録時に選択の幅を広げるため、閉鎖的なゼミの雰囲気を打開し、他のゼミと情報交換を可能にするため、自分達のゼミの公開を試みたのが国際文化学部の森村ゼミである。同ゼミでは主に前衛芸術と情報組織論についての研究を行っているが、その対象は建築、デザイン、演劇など幅広く、ゼミ生の興味関心がそのまま自主性に基づいた研究へと結びついている。

 五月二十八日、五限のチャイムが鳴ると同時に教室へ入ると、そこには森村教授を中心にゼミ生がアーチを描いて座り、来場者の席がそれを覆う形で並んでいた。光々と映し出すスクリーンの前では、二手に別れたゼミ生によるディベートがちょうど始まろうとしていた。

  議論は終始白熱し、時々ゼミ生以外からも積極的な意見が飛び出す。内容自体は「空間の持つイデオロギー性」という非常に難解であり、予備知識を要するものだが、最近新設された六本木ヒルズを議題に取り上げるなど、現代の学生の視点から建築を考えようとする意欲が伝わってくる。「とてもまとまっていて活発だった。ゼミ生以外でも参加しようと思わせる雰囲気がある」(国際他ゼミ・四)

 今回の公開ゼミは、対象者を広く設定したため、一年生の参加が特に印象的であった。「講義のみの授業しかない僕らにとって、ゼミは刺激的な体験だった。最大限の知識・思考力・表現力が必要だと痛感したし、良い勉強になった」(国際・一)。また、国際文化学部内の他のゼミ生も多数参加しており、自分のゼミの形式・雰囲気などと比較して、参考にしたいという意見も見受けられた。

 森村ゼミ生に対しても、様々な影響を及ぼした。「やって良かったと思う。ゼミ生以外も見ていることで、いつも以上に言葉を選ぶようになるし、見せ方も工夫するようになるから」(森村ゼミ・三)。予備知識の無い参加者を意識することで、発表における表現に甘んじるところがないのだという。また、「他のゼミは聴講できないから、今回をきっかけに交流できたこと、視点の違いに気付けたことは貴重だった」(森村ゼミ・四)という声も聞かれ、参加していた他のゼミ生から、多大な刺激を受けたという。

 参加者は一年生と他のゼミの三・四年生が中心であったが、ポスターやホームページ、学部生用メールマガジンを見てやって来た二年生も少なからずいた。また森村ゼミが実施したアンケートでは、「今後も公開ゼミがあった方がよいですか」という質問に対し、参加者全員が「はい」と答え、「今後また公開ゼミがあったら参加しますか」という質問に対しても約八割が「ぜひ参加したい」と答えている。今回の公開ゼミは、学生に対するメリットを立証する結果となったと言えるだろう。

 しかし、その試みをひとつのゼミで実行するのにはやはり限界がある。中でも特に苦労したのは広報活動だと言う。「公開をノルマとして広げることは決して望んでいない。そのことでゼミ生の研究がおろそかになるのは良くないし、余分な負荷をかけてほしくはない」。この企画自体、本来は学部がすることであって、学生に負担をかけることからすでに矛盾を生じているのだ。教授は今回の公開が制度化の足がかりになればと思う一方、ゼミ生の研究を第一に考えているため、これ以上の広報を行うことは難しいと言う。

 今回の公開ゼミに、学生の様々な需要が伴っていたのは明らかである。それにも関わらず、それを受けるゼミ制度は、まだ充分であるとは言い難い。学部はこれをきっかけに、ゼミ制度の改善に向けて、もう一度見直す必要があるのではないか。そして、今回リスクを負いながらも公開に踏み切った森村ゼミの雄志を無駄にすべきではない。

 



 

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