いかにもアメリカ的なだだっ広い家に母と娘がただ二人。大雨の真夜中に侵入者。やがて犯罪者が三人。しばらくして老人が一人。のちに死ぬ人が二人。発砲するのが三回。注射を打つのが一回。入り口のドアが開くのが二度。そして、だれも一歩たりとも家から出ない。さもありなんという設定ではあるが、とりあえず観てみようという気にはさせる。 二階の一角に位置する六畳ほどの部屋「パニック・ルーム」。ライフル弾も通さぬという鋼の壁に三十センチは下らない分厚い自動ドア。家中に配置された監視カメラの映像を映し出すテレビモニター。目的はただ一つ「誰も侵入させないこと」。作ったのは家の前の持ち主で、自らのあまたの資産を保存した金庫を守るためだった。話は、離婚したばかりの大学講師、アルトマン母娘がこの家に越してきたその夜、大金を狙った侵入者が現れる所から始まる。異変に気付いた母娘はお約束どおり「パニック・ルーム」ヘ。侵入者三人があの手この手でドアを開けようとする様は、ホームアローンを彷彿させなくもない。 母親役のメグ・アルトマンことジョディ・フォスターはさすがの好演。娘役のクリスティン・スチュワートも病弱さと利発さを兼ね備えた少女をみごとに演じている。 しかし、全体としての完成度は決して高いとは言えない。密室劇としての精度が高いわけでもなく、かといって徹底的にドキドキハラハラさせるわけでもない。こうした密室ものに必須の「最後の大どんでん返し」というのもあるにはあるがパンチ力不足。観ていて「こう撮ったほうがもっと面白いのでは」と思わせられる場面に何度も遭遇し、鑑賞後の物足りなさはひとしおだ(もちろん皮肉で言っているのである)。ちなみに新開発されたカメラワークシステムがこの作品で初めて使われたようだが、とくにこれまでと変わらない気がした、私は。要の「ホン」があれでは撮る方も限界があるのか。ジョディにも限界はあるのか。      (すけさん)

 

  


 

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