hideというアーティストがいた。独特の発想力によって書かれる歌詞と、シンプルかつ奥の深いメロディーを融合させ、それを多彩な歌声によって表現する。その彼にしか表現できない音楽は、今でも多くの人を魅了してやまない。 七月に発売されたアルバム「hide SINGLES 〜Junk Story」は、そんな彼の音楽活動の軌跡ともいえる、全てのシングル曲により構成されている。王道的なロック・チューンで、駆け抜けるような「ROCKET DIVE」、ほのかに哀愁の漂う旋律に乗せて、自分という存在を問い続けている「TELL ME」、深い悲しみを拭い去るように優しく語り掛けた、練りこまれたメロディーの「MISERY」など、hideが残した名曲が、全く色褪せずに、生き続けているアルバムとなっている。 hideはいつも音楽を通して夢を持つこと、持ち続けることを語りかけていた。このアルバムに収録されている、日の目を見ずに眠り続けていた未発表曲「Junk Story」という曲には、そのhideの想いを、色濃く受け継いでいるような印象を受けた。明るく、前向きなロックテイストのこの曲は、どことなく温かみも含んでいる。その音を基盤に、hideらしいエキセントリックな歌詞で描き出される世界は、かつて想像もできなかったような情景を、脳裏に焼き付ける。そんな中で、「夢見た夢は、溢れてますか」という歌詞が、耳に届く。ストレートに表現されたこの一節に、彼の叫びは集約されている、そんな気がした。 夢は誰もが持ったことのあるものだ。しかし、今現在持っているかと聞かれると、首を傾ける人も多いのではないだろうか。確かに今は夢も持てないような時代かもしれない。それでも、hideは絶えず語りかけてきた。このアルバムは、多分彼の最後の声となるだろう。hideが残したもの、彼の叫びを感じ取って欲しい。         (牧人)

 

  


 

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