法政大学始まって以来の大型留学プログラム、スタディー・アブロード(以下、SA)の第一回が終了した。 国際文化学部の目玉ともいえるこのSA。世界各国九カ国、全十一大学へ約半年間の留学が義務付けられている。留学先では語学の習得と異文化理解のための授業を行い、それが法政大学正規の単位として認定されるといったものだ。 一学年、三百名弱の学生が世界各国に散らばるとあって、プログラム自体が試行錯誤と可能性の模索そのものであった。「学部の実験台だった」という声もある中、第一回SAプログラムの結果は、「法政大学海外校」とならないために、どのように足跡を残せたのだろうか。

 SAの最大の特徴と言えば、学部生全員が間違いなく留学することができる点だ。しかしそれによってプログラム自体の質が低下しているのではないか、という声が多く聞かれる。具体的には「思ったより語学学習の成果が得られなかった」、「最終的に評価が甘くて楽だった」などである。  そもそも「学部必修授業の延長」であるSAだけに、一般に厳しいといわれる海外の評価体系・授業内容が日本の標準から大きく外れるわけにはいかない。評価の甘さからか「SA自体長期休暇だった」「単位を取るためだけのもの」という意見も聞かれる。

 更に、ドイツ留学者は無条件で大学の学部授業を受けられるが、他は語学学校の授業で、一定の語学力の提示をしない限り学部授業は受講できない、という格差も生まれている。一方ドイツでも僅か四週間の集中語学授業の後、レベルの高い授業を受けなければならず、  「授業を完全に理解していた人は少ない。授業の受け方によっては、意味がなかったとも考えられる」 など問題点もある。

 これらの問題に対して学務部SA係の生田眞敏さんは、  「さまざまな語学レベルの学生が限られたクラスで授業を受けるしかないため、ならなかったため、授業レベルに不満が残った学生がでてしまった。今後は今回のSAの反省を踏まえ、より細かなレベル分けや、ついていけるような授業を探してもらうなどしてもらう」。  とあくまで「これから」の姿勢をとりながらも、  「SAは三年次以降の学習へのステップという流れを理解して、SA後の授業や演習のことに目を向けてほしい」。  と学生に呼びかけている。

 しかし、演習を筆頭としたSA後の授業を高い質に保つことができるか、またSA前の授業で語学を含め、いかに現地での授業へ向けての対策ができるかなど、考慮するべき余地は残されている。本当の意味でSAを三年次以降へのステップと捉えるのであれば、外国語で行う専門科目の量的向上も必須だ。

 更にプログラム自体を洗練するためにも、後輩へのフィードバック体制の整備も怠ってはならない。分科会(SA先毎の学生の自主的な集まり)や語学とインターネットの活用など、国際文化「らしさ」を発揮した制度と学生の意識改革が強く望まれる。

 「文化情報の受発信」というテーマはSAのみならず、常に国際文化学部の根底に掲げられている。その中でオーストラリア、アメリカや韓国を中心として、受信だけでなく発信者としての活動も目立った。  韓国では金泳三前大統領を訪問し、クリントン前米大統領との会話内容など、ただ生活しているでは決して得られない貴重な体験だったという。オーストラリアではネイティブと交流を図るためのバーベキューパーティーや成人式を行った。成人式を海外で迎える現役生のために、浪人生が中心となって式を企画し、真夏の浜辺で国家を斉唱した。  そしてアメリカ・カリフォルニア大学デイビス校では近代日本文化を紹介するレセプションを開催し、百三十人を超える参加者があり、法大生も約九割が協力者として参加した。

 「時間的、環境的制約もあったが、現地のサークルや学部ぐるみでの協力もあり、理想に近いものができた。新聞広告やテレビCMも活用して人を集め、当日はプレゼンを中心に日本料理も振舞った」。  と企画者の一人である高江さんは言う。

 「海外で何を得たかは言葉にできない。逆にいえば、言葉にできないからSAに行く価値があるんだと思います」。 という高江さんの言葉が学部生が何をSAで得てきたかを象徴しているのではないだろか。

 国際文化学部の魅力の一つ、と言いながらも、やはり最大の特色であるSA。これをより良く、洗練されたものにしていくのは学部の運命を占うのにも大きな鍵となる。

 「期間の延長や内容の充実という点を踏まえて、理想の青写真としてはSAという形で、交換留学制度が成り立てば良いと思っています」。

 学務部の生田さんはあえて現状からかけ離れた理想を口にした。というのも、現在の日米間の留学者数に代表される大学の「格差」を埋めない限り、世界から相当数の留学生を受け入れることは難しいからだ。

 それには学生の自主性の向上という意味でも、現地での活動への積極的な支援と推奨の姿勢が求められる。プログラムの主役はあくまで学生だと言うことを踏まえた上で、いかに大学側が提示した以上の成果を出すことができるか。今回は文化情報の発信という学部の本質に迫る点で「レール」を拡充することができた。こういった活動が慣例化し、留学先にも定着していけば本当の意味での国際交流も成し遂げられるだろう。

 「SAは成功だったと思いますか?」。三十五人に対するアンケート調査で、この問いに三十一人が成功と答えた。二六四人の「実験台」はまだ始まったばかりの国際文化学部の沿革に、大きく、深い足跡をつけた。  企画・取材・文 舛井

 

 



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