転換期の学部教育  〜社会学部編〜


 清成忠男総長の推し進める「拡大的」教学改革のあおりを受けて、既存学部の動きがあわただしくなってきた。大学が四つの新学部を設置後、社会、経済、経営、文学部が相次いで学科新設を発表するなど組織改革に着手。「マスプロ教育」から「きめ細やかな教育」への転換は成功するのか。時代の要請に学部教育はいかにして応えるのか。理想と現実の狭間でゆれる「学部改革」の実態を探る。

 

来年度、学部創設五十周年を迎える社会学部。この記念すべき年に新学科を設立(九五五号にて既報)し、それに伴いカリキュラムを一新させる。その目的はどこにあるのか、また今後の学部の展望などについて社会学部長である須藤春夫教授と実際カリキュラムの作成にかかわった徳安彰教授に話を伺った。 〈二学科五コース制から三学科体制へ〉 社会学部では多摩移転当時より二学科五コース制で授業を行ってきた。それが来年度よりコース制を廃止し、メディア社会学科を加え三学科体制へと変更になる。なおこの体制は来年度の新入生より適用され、在学生は従来通り五コース制で授業を行う。これにより今までの各コースは、各学科の中に集約される。この変更の目的について「より学ぶ動機を明確にし、きめの細かい教育を行くため」と須藤教授は話す。更に徳安教授は「学科基礎科目も重要さを知って欲しい。だからこちら側としては入り口から考えを持って入学して欲しいと思い学科設置を行った」と別の側面を指摘した。確かに今年度までのカリキュラムでは、学科において学んだ基礎の考え方が重視されない面があった。そこで学科設置により、学科ごとの基礎の「ものの見方」が重要性であるということをもう一度強調する狙いがある。 一方今までの五コース体制の中では二年次よりコース選択が可能であり、一年間基礎を学びながら自分の学ぶ専門分野を発見していくことができた。しかし今回の改定によって、入学前に学科を決定しなければならなくなり、学習選択の幅を狭めてしまう可能性もある。これに対して「今回のカリキュラム改定により五コースが三学科に集約され、学科の中で選択できる科目群の種類がコース時よりも大幅に増加した。だから学習の選択の幅を狭めることにはならず、むしろ広まった」と回答した。またこれほど学科が強調されると学科間の垣根の高さが心配されるが、他学科の科目群からも授業選択が可能になっているので問題ないとしている。 〈学科間の差〉 今回の改革と同時に入試における学科第二志望制が廃止され、一学科のみしか受験ができなくなる。それによりメディア社会学科の高倍率が予想される。従来のコース制においてもメディア社会コースは、社会学部生の半数以上が選択しており、学科設置となればその人気も集中し、他学科との偏差値に差ができる心配がある。これまでの社会学部は学科の隔てが無かっただけに違和感が生まれるのではないか。これに対し徳安教授は「学科ごとに偏差値的な少し差は出るであろう」と差の発生はやむなしとの考えを見せた。しかし「本当にこの学科の勉強がやりたくて入ってきた意欲を持つほうが大切だと思う」と学生達の熱意の重要性を強調する。    〈今後の社会学部〉 今回の改革は、最終段階ではなくまだ継続するとする。まず語学の改革、そしてさらに「セメスター制の導入を検討中」と徳安教授は語っている。ただしセメスター制は、今までの制度とは異なるので慎重な議論が必要とされる。 そして最後に社会学部の将来の教育方針について須藤教授は「今まで社会学部が行ってきた広い視野での人間と社会とのあり方について科学的に探求し、理論と現実との洞察力を強めるための教育をかたくなに続けていくべきだと思う」と語ってくれた。 〈改革に対する疑問〉 今回の社会学部の改革は、学ぶ動機の明確化と視野を広げるものである。しかしこの改革は、本当に学生の視点に立って行われたものであろうかと言う疑問が残る。教授側は、ある程度汲み取ったとしている。しかし実際の改定内容を見ると、学科は出来た、しかし科目群など他の点では教授陣が強調するほどの改革とはいいがたい。むしろ科目群の増加は、学ぶ方向性の喪失を招く恐れもある。そして実際に在籍中の社会学部生にカリキュラム改革の印象を聞いても、メディア社会学科の人気にあやかる社会学部の姿を映しだしただけという厳しい意見も聞かれた。このような意見を総合すれば、学生達の希望を取り入れたものとは言いがたく、理念先行型の教授陣主導による改革と言えるのではないのだろうか。

 

  


 

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