法大格付けAAマイナス取得


市場に認められた大学経営

残る教育改革への不安

 本学は二月六日、格付投資情報センター(R&I)よりAAマイナス(ダブルエーマイナス)の高格付けを取得した。学校法人における格付け取得は国内初の事例となった。これにより本学は財務の健全性が市場に認められたことになる。十八歳人口は減少傾向にあり、志願者数も減少が予想される中でこれほどの高格付けを本学が取得できた理由としては、立地条件や高い知名度が挙げられる。しかしそれらよりも、近年のキャリアデザイン学部設置に代表される世間の耳目を集める教学改革と、学費値上げによる帰属収支差額比率の歴年改善が大きな要因である。

 

  今回の格付け取得は、本学が資金調達の多様化の一環として今後予定している学校債発行(時期・金額未定)を見越してのこととみられる。

  学校法人の運営は、収入の大半を学生からの学費等納付金でまかなっており、収入の安定性が極めて高く、他の一般企業体と比べ事業リスクも少ない。そのため高い格付けを取得しやすい。

  本学が取得したAAマイナスは、フジテレビ・三井物産・日立製作所・三菱商事などと並ぶ。これほどの高格付けを取得出来たのは、昨年「二十一世紀COEプログラム」に「日本発信の国際日本学の構築」が採択されたことや、都心の交通の便を生かし、社会人を多く受け入れていることなど、生涯学習社会を見据えた先進的な姿勢が評価された結果といえる。

  学校債については、文部科学省が二〇〇一年に募集対象を父母や教職員から一般向けにも規制緩和を行った。これを受けて本学では法的に投資対象とされにくい学校債を金融機関に譲渡し、金融機関はペーパーカンパニー(特定目的会社)に再譲渡する。特定目的会社は学校債を担保にして社債を発行、適格機関投資家に販売する。

  本学におけるメリットとしては、健全な財務運営を内外にアピールしたことにより、優秀な教員を集めやすくなることが予想される。また本学、広報・広聴課(以下広報)は今回の高格付けは教学改革への評価でもあり、したがって「学問の場としてのイメージアップも図れた」としている。これにより志願者へも好印象を与えられたのではないか。

  しかし学生へもたらされるのはメリットのみではないようだ。

  本学が高格付けを取得できたのは、教学改革による志願者人気増もさることながら、それよりも、全学部で行われている新規入学者への学費増額による収支の増大によるところが大きいと考えられる。このうち、文学部日本文学科は二部制を廃止し、昼夜開講制に移行したため、夜間に受講を希望する学生も昼間に受講する学生と同額の学費を徴収されることとなった。本紙の「今までの学費値上げが今回の高格付け取得に繋がったのではないか」という問いに対し、広報は「(今回の高格付け取得は)教学改革や財務基盤の強化に全学一丸となって取り組んできた成果だ」としている。また今後も「他大学との差別化を図るため法科大学院(ロースクール)設立、専門職大学院設置等の教学改革を引き続き行う予定」であり、「今後も教育研究の充実や財務内容を考慮しながら(学費値上げは)検討する」との発言から、学費値上げは継続して行われる可能性が高いと思われる。

  今までにボアソナード・タワー建設、小金井キャンパス西館建設など多額の投資を行ってきた結果、同規模他大学と比べ、本学の有価証券など運用資産は見劣りする。それにもかかわらず、今後本学は市ヶ谷キャンパスと小金井キャンパスでの再開発を予定している。具体的スケジュールは未定であるが、二、三年後に着工するとみられる。その際に今回発行予定の学校債資金が利用されることは十分に考えうることである。

  今後学校債を発行し、一時的に資金が潤沢になったとしても、学校債は負債である以上償還が伴うことを忘れてはならない。

  今年度はキャリアデザイン学部設立など、世間の耳目を集め志願者数も大幅な増加をみた。しかし一方で既存の学部の志願者数は減少傾向にある(二面に関連記事)。教学改革が志願者数を確保することによる大学評価の確立、及び資金調達を目的としていたのならば、教学改革はこれからも永続的に行わざるをえない。

  今回は、AAマイナスを取得し、社会的に経営力の評価を得たが、その要因となった学費値上げによる歴年収支差額比率の改善や、志願者集めの教学改革は、その場しのぎのものである。長い目で見れば、これは大学にとって根本的な解決とは言えないのではないだろうか。

 

 



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