先日、友人と話をしていて妙な感覚に陥った。自分の考えていることがうまく言葉にできなくなり、自分自身も何を伝えたいのかが解らなくなってしまったのだ。なんとか言葉にして伝えてはみたものの、私の考えていたことは理解されてはいないようだった。小学校以来の友人である彼は、私にとって最も交流の深い人の中の一人であり、そんな彼と話しをしていてこんな感覚になるのは初めてであった。結局、自分の考えていることを伝えることができなかった

 今まで何気なく思っていた「話す」ことがこんなにも困難であるのか、と思い知らされた。いや「話す」ことに限定せず文章を「書く」など他人に自分の考えていること、思ったことを言葉にして表現することは困難であると思う

 人は自分の頭の中で考えたり、思ったりしているときにはそれを誰かに伝えるための言葉を必要としない。だから自分の頭の中ではどんな考えでもどんな思いでも言葉にすることなく理解できる。例えば「憂鬱」という言葉を知らなかったとしても、天気が悪かったり心配事があったりして気が晴れなければそのような気持ちになるだろう。しかし、その言葉を知らなければ、このような気持ちを人に伝えるのはかなり大変なことである。それでは人に何かを伝えるのは諦めてしまうべきだろうか

 自分の考えていることがすべて言葉として表現できてしまうとしたら、人に思っていることを伝えるために言葉を探すことはなくなるだろうし、表現することも楽になるだろう。しかし、そのような状態はありえない状態であり、もしあっても言葉によって人の考えや感情が支配されている状態である

 たとえ表現することが困難な考えでも、たとえ言葉にならない思いでも、そのような考えや思いを大切にしていきたい。ところで、この文章で一体どれだけの人に私の考えが伝わったのだろう。私はこの文章でどれだけ自分の思いを伝えられるであろう。

 

 


   

 


 

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