「不安なのはあなただけではありません。子供をみんなで育てていきましょう。お父さん、お母さん、肩の力をぬいて!」学校の帰りの電車の中で、ふと中吊り広告を見上げると、週刊誌やら新発売の飲料水やらの広告に混じって、こんな広告があった。おそらく、児童虐待防止のための広告なのであろうが、とうとうこんなものまで目にするようになるとは、寂しい世の中である」
▼ここ数年、テレビのニュースや新聞などで「児童虐待」という言葉を目にする機械が増えている。つい先日の厚労省の推計によると、児童虐待の件数は年間約三万件にも上るということだ。分かっているだけでもこの数だ。把握されていないものも含めると、相当な数になるだろう▼児童虐待が急増した背景には、人間関係の希薄化が大きく影響しているような気がする。それは、一般的に虐待環境にある家庭が社会的に孤立しているということからも窺える。人間関係の希薄化が進むにつれ、精神的 に悩みを抱える人が増え、心の貧しさと言うものが浮き彫りになってきている。自分の子供を愛するという、そんな当たり前の心をどこかへ忘れてきてしまった人もいるのだ。同じ人間として、こんなに悲しいことはない
▼いつだったか、子供が生まれたばかりの従姉が、親の虐待で亡くなった子供のニュースを見て、涙を浮かべていた姿が印象に残っている。子供を愛する親の心とは、そういうものなのではないだろうか
▼そんな風に思いながら電車を降りた。家へ向かって歩く途中、上から小鳥の鳴き声が聞こえてきた。見上げると、そこにはツバメの巣があった。親鳥が、子供のために餌を運んでいる。小さな命を育もうと、何度も何度も一生懸命に。久しぶりに見た、心が温かくなる光景だった
▼どんな生き物であろうとできる当たり前のことを、できない人間が増えている。この小さなツバメがこのことを知ったら、どう思うだろうか。私は少し、複雑な気分になった。      (大山千鶴)

 

 



 

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