「この頃、ファンデーションののりが悪くて」と友人に愚痴られる。時には、同意も求められる。「お肌の曲がり角」がみえてきた、という▼今年は冷夏と言われたが、日焼け止めのCMは例年通り良く見かけた。紫外線の肌への影響に男女の相違はない。しかし、やはりCMには女性ばかり起用されていた。紫外線は男性よりも女性に恐怖を与えるらしい▼「年をとったら、シミだらけになっちゃうよ」。日焼け止めを使わない私を友人は注意したがる。そこで、シミだらけになったら私達は友達じゃなくなるのか、とにっこりして問うた。そうじゃないけど、と友人は口ごもった▼いつまでも女性は若く美しくいたいものですよね、とキャッチフレーズは踊る。女性たちは、いつの間にか「若く、美しくあること」に大きな価値をおいている。しかし女性が若く、美しくあることが、特権化されすぎてはいないか。「やだ、今の言い方おばさんみたい」という言葉を街中で耳にする。おばさんのなにが「やだ」、なのだろうか。若さがあれば立派なのか、女子大生。おばさんの中には、魚も三枚に下ろせれば、商談をまとめた人も、また子供を、命を育ててきた人もいる。長い時間生きてきた経験は決して若さに負けないはずだ▼女性たちはなぜ、若く美しくありたいのか。もちろんその背景には男性の存在があることは否めない。若く美しい女性に魅力を感じる男性はあとをたたない。しかし、そこで、女性も男性も考えて欲しい。全世界の半分は女性である。その女性を「若く美しい」だの、「おばさん」だので閉じ込めてしまうのはいかがなものだろうか▼人間は年をとる。それに逆らうものばかりに目を向けていても先は短い。では、女性にはその先に何があるのか。「仕事」か「妻」か「母」か。それ以外か。それはわからない。しかしそのいずれも「若さと美しさ」と同じほどの価値を持つ社会になれば、「曲がり角」を曲がっても、下り坂にはなるまい。       (渋谷 朋子)

 

  


 

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