「西高東低」くつがえす

 七年目にして初の勝利だった。甲子園ボウルでの勝利。それはアメリカンフットボールの選手にとって何にも変えがたい特別なことなのだ。試合終了後、選手達は観客席に向かって並んだ。観客席から見て一番左側、LBキャプテン志賀とディフェンスリーダーLB平本は共に過ごした四年間に思いを馳せたのだろうか。うなずきあい、そして、固く握手を交わした。二人のまぶたには涙が溜まっていた。

 アメリカンフットボールの世界で法政「トマホークス」の名を知らぬ者はいないだろう。それもそのはず、関東において七年連続で優勝を果たしているのは他ならぬ法政なのである。しかし、歴代の選手達が挑みながら誰もが到達できなかった地点が甲子園ボウルでの勝利と言える。関東の優勝校と関西の優勝校、東西の最強のチームがぶつかりあうのが甲子園ボウル。これは実質的な大学日本一を争うゲームだ。

 あるフットボール選手は「個人技の関東、組織力の関西って言われてるけど。個人が組織に勝てるはずがないね」と話す。「西高東低」などとも言われており、関西優位は絶対であると言う考えが大勢であった。関東には法政の力に匹敵するようなチームが数多く存在するわけではない。今年度の成績を見ても法政は秋のリーグ戦で全勝を誇っている。現時点では、関東において最強であると言っても過言ではないだろう。一方、関西リーグを見てみると、毎年、甲子園ボウルに出場する学校は関西学院大学、立命館大学、京都大学と一様ではない。ライバルの中でもまれ、力をつけて甲子園ボウルに挑む関西。その一方でライバル不在の関東は例年苦杯をなめてきたのである。

 だから、今シーズンは大判くるわせであったと言える。甲子園ボウルを制したのは関東の法政だったのであるから。「言葉は悪いですけど、ざまあみろって感じですね」と言ったのは指令塔のQB井川。彼が今年の法政の攻撃を指揮していたわけだが、彼は今シーズン一つの改革を行っている。法政は伝統的にランプレイを得意としている。中でももっとも高度とされる「トリプル・オプション」を多用し勝利してきたチームとして有名である。しかし、有名であるが故にもはや他校に研究され尽くしてしまった感が強い。「もうオプションは読まれているから」法政の大森監督はシーズン終了後語っている。井川はオプションプレイの質を保ちながらも要所要所でパスを織り交ぜていくよう決定したのである。これは法政にとって大きな路線変更を意味する。

 結果として今シーズンは甲子園ボウルで優勝。学生日本一の座につくことができた。「後輩達に目に見えない何かを残すことができたと思います」試合終了後井川はそう語った。

 

 


  


 

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