金光新監督インタビュー


 

 昨秋リーグ戦終了後、九年間の長期にわたり、法大野球部監督として指揮を執った山中正竹前監督が勇退した。それを受け、今年、新たに第十五代監督に金光興二氏が就任した。金光監督は法大野球部出身。現役時代、高校、大学、社会人の全てにおいて日本一を経験し、大学時には、怪物・江川と共に法大黄金期を築いた名プレーヤーだ。指導者としては、母校・広島商業高校を二度のセンバツに導くなどの実績を誇る。そんなアマ野球界のエリートが、低迷する法大野球の復建に乗り出した。金光新体制のもと、動き出した法大野球部。精神面の強化や、プレースタイルの一新、さらには江川氏を臨時コーチに招くなど、早くも改革が始まっている。四季ぶりの優勝を目指し、その手腕が注目される金光野球とはどのようなものか聞いた。

 ――法大野球部監督就任の要請を受けた時にはどう思われましたか。

 当時は会社の仕事も充実していましたし、家庭もありましたから、最初に要請を受けた時には、正直言って悩みました。それでも今の自分にとって、大学生活での経験は非常に役に立っていますし、その母校に恩返しできればという思いが強かったこともあり、要請はきちっと受けとめるべきだと思いました。

――就任当初、野球部の印象はどうでしたか。

 前監督の指導方針の中で、選手がそれぞれ自主性を重んじて、考えながらやっているなと思いました。

――一月七日から練習を開始されましたが、どのような指導方針で練習を行っているのですか。

 野球、つまり勝負事というものは、練習で身に付けた技術を試合で出せなければ意味が無いんです。土壇場になればなるほど、それを引き出す原動力として精神面の強さが重要になってきます。『ハート・ハード・アグレッシブ』というスローガンを掲げ、まずその面を改善することからスタートしました。練習時間も増えましたね。

――監督自身も合宿所で選手と一緒に生活されているそうですが。

 グラウンドの中だけで選手を判断するのは大間違いなんですよ。ユニホームを着ていない時ほど、個人の性格や生活態度がよく出ますから、プライベートで会話をしたり、一緒に食事をとったりして、何を考えているかという内面的な部分を把握してあげる。それを試合にどう反映するかが重要なんですよ。とは言っても四六時中、目を光らせて監視しているわけではないですよ。

――金光監督の目指すチーム作りとはどのようなものですか。

 私の目指す野球は、まずディフェンスでいかに相手に点をやらないかということ。野球においてバッティングほど当てにならないものは無いんですよ。打撃はどうしても波や、スランプがあるし、また相手ピッチャーの良し悪しに左右されますからね。逆に守備や走塁はスランプが無い。野球は点を取られなければ負けないわけですから、守備型のチーム作りをしないと、安定したチーム力をキープ出来ないんですよ。究極に言えば一―〇で勝ち抜いていける野球ですね。

 そのためにミスの無い走塁、確実なバントなど、できることを確実にやり、少ないチャンスをモノにする。次に打撃の良い選手や、足の速い選手などの個々の特徴をどう活かしていくかですね。

――この野球はピッチャーに大きな負担がかかりますよね。

 私の現役時代のように、江川という飛び抜けたピッチャーがいれば別ですが、野球はピッチャー一人の力で勝てることはそうありません。ピッチャーの良し悪しではなく、中心となるピッチャーを助け、良さを引き出すのは、キャッチャーのリードであり、内・外野の堅実な守備です。その総合力で勝つことを考えていますから、ピッチャー一人に負担がかかることは無いですよ。

――今までの経歴で優勝するチームに共通してあったものとはなんですか。

 まず、強くなりたい、うまくなりたいという強い気持ちをもっていた。だから、練習すればするほど上達していきました。あとは、監督がいない時のほうがチームとしてまとまっていましたね。監督がいようがいまいが、選手同士が意識を高くもって、成すべきことを妥協せず、徹底してやっていました。いい意味でケンカしているような、緊迫する雰囲気がありましたね。 ――今の野球部にその雰囲気はありますか。 当初の段階よりも何人かの選手、特に上級生を中心に徐々にそういう雰囲気は感じるようになりましたね。

――二月六日に、江川卓さんを臨時コーチとして招いた意図は何だったのでしょう。

 ディフェンスといえばピッチャーです。まず、ピッチャーの意識改革をすることが狙いだったんですよ。江川は今までの経験のなかで、ピッチャーとして一流のものを持っていますし、技術以外にも、考え方や練習に取り組む姿勢、そういうものを一流の人からアドバイスされると、相当な刺激があるものなんですよ。選手の反応も全然違いましたね。また、六大学野球が低迷しているなかで、たくさんのマスコミも来てくれましたし、注目されることはいい意味で励みにもなるんですよ。OBには素晴らしいバッターもたくさんいますから、これからも不定期に呼んでいくつもりです。

――今年の戦力はどうですか。

 去年の主力クラスがほとんど抜けている状況を考えれば、今年の法政のおかれている状況は苦しいという声もあるようです。ですが、どのチームも四年生が抜け、一冬越えると、去年とは全く別のチームになります。だから、私はそんなに差があるとは思っていません。その状況で勝ち抜くには、技術以外の面で上回る部分が必要だと選手には言い聞かせています。

――オープン戦が二十六試合と多いですよね。

 私のやり方は、練習の中でも実戦形式が多いんですよ。実戦の中でしか選手の持っている本当の力量は分からないですからね。練習では目立つけど試合では実力を出せない選手や、その逆の選手。その見極めをするためにできるだけ試合を組んで、その中でチーム作りや選手の力量を把握していくつもりです。

――エースやクリーンアップ候補、期待する選手を教えていただけますか。

 最後のシーズンですから四年生には頑張ってもらいたい。新里、佐々木ら主将クラスを中心にチームを引っ張っていってもらいたいですね。投手陣は、最もリーグ戦を経験して実績もある松本祥(法・四)が柱になるでしょう。今は調整段階ですが、開幕に合わせて、きちっと仕上げてくるはずです。打線の方は難しいところですが、今までの実績や勝負強さを考えると、四番は佐々木(法・四)しかいないでしょうね。 ――春季の目標は。 やる以上は優勝を目指しますよ。

プロフィール

 一九五五年九月十五日、広島県生まれ。

 広島商業高校三年時にセンバツ準優勝、夏に全国制覇を達成。法大では強打の遊撃手として活躍。四年時には主将を務め、同期の江川卓氏と共に四年間で五度のリーグ優勝へ導く。大学通算打率・三一三。法大史上二位となる一〇八安打を放ち、ベストナインに三度輝く。

 三菱重工広島では七九年の都市対抗で優勝。その後、母校・広島商の監督を七年間務め、センバツに二度導いた。

 三菱重工中国支社勤務を経て、今年一月一日付けで、法政大学野球部監督に就任。

<取材>   清野智太郎

 

 


   

 

COPYRIGHT(C)法政大学新聞学会

このホームページにおける全ての掲載記事・写真の著作権は法政大学新聞学会に帰属します。

無断転載・流用は禁止します。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送