春季Vならず


 

 東京六大学野球春季リーグは、六月第一週の早慶戦をもって終了する。

 今季の法大は、昨秋戦線離脱していた土居(営・四)・奈須(法・四)の復活による投手力強化で、優勝候補の筆頭にあげられていた。しかし、昨秋法大をひっぱってきた松本(祥)(法・三)が腰痛で離脱。また、奈須もリーグ戦開始直前にひじの痛みによる赤信号が出て、再び投手の台所事情が厳しくなっていた。さらに、浅井(現・阪神タイガース)の抜けた捕手の穴をどう埋めるかが最大の課題だった。山中監督は河野(営・四)をコンバートするなど試行錯誤の末、最終的には新里(法・三)を事実上の正捕手とし、リーグ戦に臨んだ。しかし法大は、東大、早大、明大から勝ち点をあげたものの、慶大、立大に二連敗し、三年連続の春季優勝にはならなかった。  

 

 「負けるべくして負けた」第六週、慶大に二連敗して、優勝が消えた試合直後の後藤(文・四)はこう言った。今季の法大は、まるで迷路にはまったかのような試合展開をしていた。対東大一回戦。東大・松家に対し、わずか六安打の勝利。すべてはここから始まった。

 続く対早大戦。第一戦では引き分けたものの、奪三振記録更新に挑む早大・和田(毅)に対し、十七個もの三振を献上してしまう。さらに第二戦は先発の岩浅(文・二)が乱調。三連続四死球などで先制を許し、継投むなしく逃げられてしまう。しかし、第三戦・第四戦では土居が奮起し、二戦連続の完投勝利。打線もこれに応え、澤村(営・四)・河野・後藤ら中軸の爆発により、早大から勝ち点を挙げた。

 この勢いで一気に優勝への階段を上りきりたい法大だったが、休みをはさんだ対立大・慶大戦では、「早大戦での勝利で油断した」(山中監督)まさかの四連敗。四試合合わせてわずか十七安打で、得点は対立大戦で放った後藤の本塁打の二点のみ。土居は毎回走者を背負いながらも、相手打線を抑えたが、味方の援護が得られず、黒星。さらに、対立大第二戦では、試合を離れていた奈須が中継ぎとして登板するも失策などで失点。九八年春以来、負けなしだった立大に勝ち点を許してしまう。対慶大第一戦では土居が九回まで〇点に抑えるも、九回裏のサヨナラのチャンスに適時打が出ず、凡退。逆に延長で「唯一甘く入った」と土居が話す球を打たれ、慶大に勝ち星を許す。医師の診断で、七十球程度しか投げられない奈須は対慶大第二戦に先発。九十五球を投げ切るも、本調子ではなく、六回に失点。これが決勝点となり、法大は優勝戦線から脱落した。

 とはいえ、「このままじゃ終われない」(山中監督)法大は、最終週の対明大戦でようやく目を覚ました。体調不良の主将・後藤を欠く試合ではあったが、チーム一丸となって優勝のかかっていた明大から勝ち点をもぎとった。第一戦では、初回に先制。さらに相手のミスで一点追加。投げては土居が明大打線を完封するという法大らしさが戻ってきた。続く第二戦でも、先発・中野(法・二)が先制されるも、河野の五〇 イニングス振りの適時打や、相手の失策等で大量九得点。途中二点差まで追い詰められたが、法大が継投で逃げ切った。「後藤がいないから負けたと言われるのは嫌だった」と副主将の澤村。最後の勝利でようやく秋季制覇への光明を見出せたようだ。

 今季は「土居だけが目立ったシーズンになってしまった」と山中監督。土居はほぼ全試合に登板し、勝利に貢献している。しかし、これは土居の調子が良いだけではなく、故障者が多いことにもよるためで、各選手の自己管理の甘さが目立った。それでも土居は「(連投について)疲れがないと言ったら嘘になるが、それよりもチームの勝利のためにも頑張らなくてはならない」と話し、エースとしての自覚が垣間見られた。さらに、熾烈なレギュラー争いの末に二年ぶりに正捕手の座を獲得した新里は「以前は試合に出たいという意識が強かったが、今は勝つためにどうするべきかを考えている」と話すように、たとえどんな状況にあってもチームの勝利への執念は全く変わらない。シーズンを通して全体を見てみると、どの大学も投手陣が充実していた。「厳しい、緊迫した試合になることはわかっていたが、法大にはそれを乗り切るだけの精神的な力がなかった。技術面よりもメンタル面を鍛えなければならない」という山中監督の言葉通り、一人一人の意識改革が必要なようだ。しかし、最終週の対明大戦では、チームがうまくまとまり、いい形で勝利につなげることができた。秋に向けては「練習をきちんとこなして自信をもって試合に臨めるように自分を鍛えなければ」と山中監督。選手たちも優勝以外は考えていない。全員野球でV奪回を目指すナインに、期待したい。

 

 


   

 

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