「拳」一つで勝敗を決するボクシング。一見、素人でも理解しやすい競技に見えるが、リングの上に立つ二人の間には無数の駆け引きが存在し、無数の思いが交錯するなんとも奥深い競技である。

 アマチュアボクシング競技は、3分3ラウンド方式で行われる。プロに比べれば時間、ラウンド数が少ないため、楽なのではないかと感じるかもしれないがそんなことはない。短時間だからこそミスは許されず、激しさを増す。持久力、瞬発力、集中力の三つが勝った者が勝者となる。

 練習場に入るとものすごい熱気が全身に降りかかってくる。目の前では音楽に合わせてサンドバックにパンチを打ち込む選手がおり、パンチがサンドバックにヒットした瞬間に起こるものすごい音と地響きが私の体に伝わり恐怖さえおぼえてしまった。他に隣で縄跳びをする選手、シャドーボクシングをする選手など、選手達が個別に練習をする姿がある。「仲良く、といった感じではなく、個人個人がそれぞれの目標を持って取り組んでいるといった感じです。部としてこれをやれ、といった強制は一切ないです」と吉岡健一主将(社・四)は部内の雰囲気をそう語る。

 ボクシングは一対一の勝負であり、全て本人の意思でやらなければならない。リング上では誰も助けてはくれない。日頃の練習では自主性を重んじ、自立心を芽生えさせる事でボクシングという競技に対して個人としての執着心を持たせるという意図が見えてくる。そうなるとボクシングは相手と戦う前に自分とも戦わなければならない。「練習では常に自分に厳しく自分を追い込むようにして、まず自分に勝つようにしています。自分に勝たなければ相手にも勝てないですから。まあ、これはスポーツ全般に言える事ですけど個人競技では特に大事な事だと思います」と吉岡主将は語る。

 ボクシングには減量というノルマが常に付きまとう。「ボクシングは減量が大変というイメージがあるかもしれませんが減量が苦しいと思うのは自分のミスであり、日頃から体重に関して心掛けていればそれほど苦しい事ではないんです」と吉岡主将は語るが、自身、試合一週間前に体重を五、六キロ落としたことがあるという。「朝、シリアルと牛乳で昼は水分、練習前にパンを一個食べて、寝る前に水分を摂るといった感じですね」この過酷さは半端ではない。

 常に自分と向き合って勝負するボクシング。練習においても相手はまず自分、減量においても自分と戦って葛藤に打ち勝たなければならない。選手達は常に自分と戦いながらリングに上がっているのだ。      

(池田陽平)

 

 


 

 

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