撃つまで分からない 

射撃との出会いは、与えられて得るものではない。どんな競技でもそうだが、競技への積極性が、選手への一歩となる。  「射撃の魅力ですか。撃ってみればわかりますよ」と小村将(経・三)さん。 エアライフルとスモールボアライフルという二種類の銃で、立射・伏射・膝射の三種類の型を織り交ぜ、競技は進んでいく。 十メートル先の的を撃つエアライフル競技では、銃と体がぶれないようにしなければならない。据銃と呼ばれるこの動作をいかに正確にできるかが、上級者への鍵となる。 許可書と火器を携え、五十メートル先の的を狙うスモールボアライフルは、撃った後の衝撃が強く、反動はすさまじい。 銃のわずかのぶれが、数十メートル先の的にどう影響するのか。そして、的が点にしか見えない状態で満点を撃つ感激は、やはり撃った本人にしかわからない。

二十六年前へカムバック

  先月行われたリーグ戦は不本意な成績で終わった。格下と思われた東洋大に抜かれ、関東五位に転落したのだ。 法政大学射撃部には、常時コーチや監督が側で指導するということがない。技術の上達は、先輩からの継承や、合宿の際のOB・OGからのアドバイスによって得る。 「練習時間も決まっていません。各自の意識を尊重し、最終的には自分で判断する競技なので、積極性を持たないといつまでたってもうまくはなりません」 法政伝統の「自主・自律」が、選手にとって、どの大学よりも恵まれた環境を与えている。コーチが不在なのも、その伝統の上に成り立つ。 二十六年前の全国優勝以来、その栄冠を手にしたことはない。どうしても選手の自主性だけでは、上位進出への階段を登り切れない。コーチを呼ぼうという議論が毎年起こっているのも事実だ。「自主・自律」を踏まえた新しい道へと模索する。

日本一の感覚

「私はこの雰囲気に引かれて入学を決めました。人から言われると何もかも駄目になってしまうので」 今年入部した渡邊絵美子(社・一)さんは、一年生ながら射撃部のエースだ。入部早々、春の予選では全国一位となり、日韓定期戦に日本代表選手として出場した。 メンタル面が特に成績を左右する競技において、「自分の射撃をしたい」というのは誰しも思うところである。加えて、得点を競うルール上、「点数を狙いたい、真ん中を射抜きたい」という気持ちを抑えることも土台無理な話だ。気持ちのゆれがわずかに銃身を傾かせる。 「ゴーグルや耳栓を付けるなどして自分の世界に入ります」と彼女が話すとおり、自分の射撃をいかにできるかが勝負の分かれ目だ。 そして、撃つ決断にも注意を払わなければならない。的に照準を合わせて引き金を引く。ところが、銃がピタリと静止していなくても、満点を射ぬく人もいる。結果的には変わらない満点。しかし、多くの場合、合計点は低いという。自分の型を知らないからだ。 「自分の型になるまで撃ちませんよ」と、彼女はなかなか引き金を引かない。

何十年も使われる道具

 射撃は女性向きといわれる。肘を自分の骨盤に乗せて撃つため、男性よりも発達した骨盤を持つ女性のほうが、安定性が増すのだ。また、利き目も重要な要素の一つである。例え、左利きであっても、利き目が右ならば、右打ちとなる。渡邊さんは左利きであるが右打ちである。  だが、競技を続けていくためには、維持費もかかる。まるで宇宙服のようなウェアや、銃など、手軽に買えるものでもない。そのため、代々受け継がれている物は多い。ぶかぶかのウェアを着ている人や、自分で銃床を切り、うまく銃を体に合わせている人など多く見られる。  何十年も使えるそれら道具は、数々の場面を見てきた。そして、その後何十年も同じ繰り返しの中で、手入れを加えられるのだろう。

世代を越えた一つの出会い

  シドニーオリンピックが閉幕した。多くの競技で若い選手が頂点に向けてメダルを争った。だが、この競技に至っては若い者が勝つという図式は当てはまらなかった。射撃は体力に左右されず、年齢制限のないということで、多くの可能性を秘めている。つまり、この競技にとって経験が一番の技術なのだ。 「射撃をしていたおかげで、さまざまな人と知り合うきっかけとなりました」と彼女は口にする。時を経て、射撃場で出会うたびに、選手は過去と現在の感慨の共有に浸る。

 

 


   

 

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