対話で開かれる世界への関心 〜NGO活動から〜


 遠くの国で、戦争が起ころうとしている。また、多くの人々が命を落とすのだろう。

 ニュース映像に見入れば、世界には迅速な解決を待つ様々な問題があることを理解できる。貧困、紛争、飢餓、環境。これらの問題は各国が真剣に解決に取り組むべき問題とされている。

 しかし、理解できこそすれ、私達がそれらの問題を実感することは難しい。日々の日常生活に追われ、すぐに忘れるのが関の山だろう。しかし、私達が取り組むべきように思える問題が、何故、他人事のように感じられるのだろうか?

  この愚直な問いを考えるべく学生と教員に話しを聞いた。何故、私達は解決すべき問題に対して、向き合わないのだろうか?

 

 「自分より若い中高生の人たちが、飢餓・貧困という難しい問題に取り組んでいることに衝撃を受けました」と、鈴木淳さん(文・三)は振り返る。大学一年の秋、友達に誘われて行った、国際協力フェスティバルでのことだ。これは、市民の国際協力活動への理解と参加拡大を目的とするもので、毎年日比谷公園で開催されている。そこで、開発途上国で作られた手工芸品の販売を手伝わせてもらった。鈴木さんは、これをきっかけに「自分でもできること」を考えるようになったという。それから二年。現在はNGO団体「ユース・エンディング・ハンガー(以下YEH)」に属している。

 一昨年の夏、多くの途上国からYEHのメンバーが日本に来て、全体国際会議が開かれた。「世界の多くの人たちから様々な話を聞けたことは、私にとって大きな財産になっています」。エイズと飢餓・貧困の関係や女性差別について知ることができたという。若者は、知識不足などからエイズに最も感染しやすい。将来の働き手である若者を失った社会は経済的にも衰退し、その結果、飢餓・貧困の拡大に繋がるというものだ。

  「途上国自立のための資金集めのアイディアは、自分たちで考えています」。世界エイズデーである十二月一日に、エイズと飢餓・貧困の関係を呼びかけ、YEHの拠点のある東京・茨城・愛知・栃木の各地で街頭募金を行った。他に、フリーマーケットや書き損じのはがき回収などもしている。

  「NGOに関わることで、自分がいる場所が全てではなく、目を外にも向けること、環境破壊や貧困にあえぐ人々のことも考えて生きていかなければならないことを知りました」。それが、ボランティアに携わるようになって変化したことだそうだ。先進国は途上国の資源に支えられており、その衰退が自国に影響することを知るべきだという。

 NGO活動の中で得られる重要な要素は、語学が堪能な人や、国際問題に長く関わっていて豊富な知識をもっている人に出会うことができることだという。また、日本在住の海外の人たちと接触すると、現地の文化や、ものの考え方について聞く機会も多くあるそうだ。

 グローバル化という言葉が一般化した今、我々はどの程度それに伴っているのか。先進国とだけ深い関係を築いて満足し、途上国をその輪に入れないのなら、グローバルとは言えない。自分が豊かであればそれでいい。そんな狭い心をもつ日本人ではなく、自国への恩恵がどこから来るものなのかを念頭に置き、意識を地球全体に巡らせるようにするべきだろう。      

直江 泉穂

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