徳本選手は先日の記録会で、一万メートル二十八分十二秒と箱根駅伝に出場する全選手の中で最高タイムを出した。練習量が多いことで知られる彼は、「中学生の頃から自分で作ったメニューで練習をしています」とのことだが、実際、後輩の土井選手が「徳本さんの練習をしていたら体を壊す」とうなだれるほどの量だ。
  そして、負けず嫌い。 「予選の時に土井に抜かれる場面、『行ってくれ』と言ったそうですが、意識がなくて覚えてないですよ。普通だったら悔しくて言わない言葉だけれど、予選通過のために言わせたのでしょうかね」
  だが、去年に比べて彼の雰囲気はどことなく変わった。箱根に対する気持ちを見ると、なんとなくわかる気がする。
  「前回一区での区間賞獲得。そして、シード落ち。自分の中で変わるものがありましたね。以前は周りの人に対して、威張っていたところがあったけど、接し方も変わったのかな」
  自分だけしか見ることができなかった過去とは違い、視野の広さ、責任感を感じた瞬間だった。 「(予選で)個人十五位に終わったとき、もうだめだと思って涙が出たんですよ」。箱根への思い入れはさらに増しているようだ。 さて、その今回の箱根駅伝であるが、一年生達の走りにも注目が集まりそうだ。その彼らの中でも、黒田選手はエース格の素質を持っていると言われている。
  「あいつは、二、三年後には俺を抜くよ。いっしょのメニューでやろうと誘っているのだけれどね」という先輩である徳本選手からの言葉。そして、監督からも、「あいつは走ってくれなきゃ困るからな」と言わしめるほどの実力の持ち主。黒田選手は「まだまだですよ」と笑ったが、記録を取るたびに更新していく、タイムの伸びは驚異的だ。
  そんな黒田選手であるが、目標にする選手の話題で思わぬ話をしてくれた。 「徳本さんを尊敬していますね。二十九分十七秒(一万)出して、少しは近づけたと思ったのですが、逆に離されてしまいました」。その声からは、言葉以上に尊敬の思いがこだまする。また、「やってやる。目立ちたい」という言葉や、髪の毛の色は、どことなく徳本選手を連想させる。  時代は繰り返すのだろうか。実業団入りした坪田選手を今でもライバルとして感じ、切磋琢磨している徳本選手を、現在、黒田選手が追いかけている。今回の目標を「坪田さんの記録を抜きたい」と先輩が口を開けば、「早く徳本さんに追いつきたい」と後輩が続く。
 期待の新人が徳本選手以上に化けるとすれば、それは、新たなアスリートの系譜が生まれるきっかけとなるのである。

 
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→アスリートへの道
 徳丸選手・黒田選手
ひたむきな走りから  土井選手

新春を彩る箱根駅伝本大会は二〇〇一年一月二日午前八時スタート。

  


 

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